遅くなったが、合間をみつけたので雑記しておく。
しばらく前の「Invitation」誌に、ブックガイドの氾濫を取り上げたコラムが載っていた。『このミステリーがすごい!』を刊行する宝島社などは、『この文庫がすごい!』ISBN:4796647384、『このライトノベルがすごい!』ISBN:4796650121、『この恋愛小説がすごい!』ISBN:4796650504、『このマンガがすごい! オトコ版』ISBN:4796647384、 『このマンガがすごい! オンナ版』ISBN:4796650199わけで、コラムでは、“この「この××がすごい!」がすごい!”が出せそう――とか書かれていたっけ。
そして、「00年代小説の読み方 今最も面白い150冊!」と題した「STUDIO VOICE」3月号の第一特集は、「ブックガイド」ガイドのコーナーを設けているくらいであって、“この「この××がすごい!」がすごい!”的な水準において企画・構成されている(SVの特集は、べつに、××がすごい!――とランキングしているわけではないが、「小説を特集すること」についての特集として読める。メタで自己言及的な内容になっているという意味です)。
前島賢、前田久、山田和正といった若手の文学フリマ文化人や(←僕的には、あそこで購入した優れもの同人誌で企画し書いていた人たちって印象が強いので、名づけてみました)、「QUICK JAPAN」のラノベ特集にかかわった吉田大助などがブックガイドを担当している。
でも、SVの第一特集全体のトーンを決定しているのは座談会だろう。『文学賞メッタ斬り!』ISBN:4891946822、豊崎由美とともに“「書評」評家”的スタンスの代表格となった大森望、セルフ・プロデュース能力の高さがキャラになっている冲方丁、「ダ・ヴィンチ」で豊崎との対談を連載している岡野宏文が、小説自体について話す以上に、作家という経営者、編集者、出版社、書店について語っている。小説の中身より、小説の作られ方、売られ方、読まれ方が焦点ってわけ。
小説を取り巻く業界、シーンの動きを話題にするのは、以前から書評のなかにみられたことだけど、昨今のブックガイド・ブームは、“この「このXXがすごい!」がすごい!”的、“「書評」評”的な自己言及を肥大させている(というか、そこが肥大したからブックガイド・ブームなのか?)。ネットに散らばっている読書コメントが瞬間の動物的反応をみせる一方で、ブックガイドの企画サイドやプロ書評家のスタンスがやたらメタ的になっているのだ(例えば、大森望が主要コメンテーターの一人になっている『日本一怖い!ブック・オブ・ザ・イヤー』ISBN:4860520556、そういう時代を視野に入れたガイド本だろう)。
そして、SV同号の第二特集は「批評本のリアルマップ」と題して、これまた現在の批評の不全感を論評する座談会が3本並ぶ。第一特集、第二特集あわせて、もうメタメタであって、TAKEの表紙イラストや個々のブックガイドはそれなりにポップなイメージなのに、全体としては“××自体”について評するムツカシサが伝わってくる号なのだった。
(関連雑記http://d.hatena.ne.jp/ending/20041215#p2)
(ちなみに、e−NOVELS読物コーナーで最近スタートした「限界小説書評」に、前島賢、前田久、山田和正が参加している。http://www.so-net.ne.jp/e-novels/index.htm)
二階堂黎人発、笠井潔参戦の例の本格ミステリ論争だが、今度はe−NOVELS「週刊書評」(読物コーナー)に、千街晶之、鷹城宏による『容疑者Xの献身』評が掲載された。http://www.so-net.ne.jp/e-novels/