「ファウスト」vol.6 SIDE−Bを頂戴した。SIDE−A(ISBN:4061795864)とSIDE−Bの二分冊にしなければならなかったこのとんでもない分量のvol.6の特集は、「新伝綺リプライズ!!」。つまりvol.3で「新伝綺」を第二特集していたことの第二弾であり、奈須きのこをメインにすえた点も引き継いでいる。
ファウスト賞は今回も受賞作なしで、この雑誌出身の新人はまだ誕生していない。簡単に選ばない、すごい新人を見つけるんだ――という意気込みはわかるけれども、特集が一回行った企画の「リプライズ」であることとあいまって、異端児として立ち上がった「ファウスト」も落ち着いてきた印象が……。
台湾版、韓国版の刊行決定という流通地域の拡大だけでなく、そろそろ、雑誌の次の“核”を予感させるくらいの新しい要素が欲しい――といったら求めすぎか。
一方、一時期みたいにメフィスト賞が騒がれなくなった「メフィスト」は、来年一時的に休刊してリニューアルするという。その傍ら、「群像」に「ファウスト」系、ミステリ系の作家の名前を見かける昨今だったりするわけで、講談社が小説雑誌を今後どう転がしていくのか、興味を持っている(ほかに「小説現代」、「エソラ」って器もあるわけだし)。
さて、「ファウスト」vol.6 SIDE−Bの編集後記をみると、太田克史編集長は〔マイルス・デイヴィスの『Agharta』、『Pangaea』のような、混沌そのもののアルバム(記録)を文芸雑誌の世界をフィールドにして創りあげたい思いがそうさせたのだろうか〕と記している。
ここでは、「ファウスト」vol.6からマイルスの2作が、ともにセット販売の圧倒的ヴォリューム感を持っていることで連想されたのだろうが、共通点はもう一つある。
《イン・ア・サイレント・ウェイ》〜《ビッチェズ・ブリュー》以降のマイルスのエレクトリック化、ロック/ファンク/ソウルへの接近は、旧来のジャズ・ファンからすると裏切りにみえた。ちょうど、新本格以降の流れより登場した舞城王太郎/西尾維新/佐藤友哉らの異形ぶりが、従来のジャンル観において物議を醸したように。そして、《アガルタ》ASIN:B0000027DZ《パンゲア》ASIN:B00000273I、周囲の批判などぶっち切り、自分の道を突っ走った時期のマイルスのライヴ大作だった。なるほど、太田編集長が引き合いに出したくなる作品群である。
1、2カ月前だったか、エレクトリック化の渦中にあったマイルスのワイト島フェス出演(70年)の映像を偶然、WOWOWで見た。それをきっかけに、僕は最近、マイルスを聞き返していた。だから、太田編集長のマイルスへの言及を面白く思った。
――とかなんとかいいながら、《イン・ア・サイレント・ウェイ》以降のマイルスの変化にスリルを覚えつつ、気がつくとそれ以前のジョン・コルトレーンを従えた時期のほうを多く聞いている。自分の耳は、案外保守的なのかしら……。