ENDING ENDLESS 雑記帖

文芸・音楽系文筆業=円堂都司昭のブログ

安藤礼二「『虚無への供物』論」

上記は、「群像」6月号に掲載されたもの。
安藤礼二の論考自体、『虚無への供物』ASIN:4488070116にならって、謎解き、犯人当てを意識した書き方をしている。だから、詳しくは触れない(それほど意外な結末があるわけではないけれど)。
この評論では、『虚無への供物』を完成させるうえで「昭和三十年三月一日」は重要な日付だったと指摘しながら、その説明を加えるのは、しばらく後の箇所だったりする。話題を持ち出し、調理する順番にやや難がある。また、「〜のである」が繰り返されるなど、文章に粗さもみえる(俺もけっこうやっちゃうけど)。
とはいえ、実の兄、父に対する作者・中井英夫自身の思いが『虚無への供物』に封印されているとして、周辺事実や他の作品などと照らし合わせていく過程には緊張感がある。興味深く読んだ。
群像 2006年 06月号 [雑誌]