ENDING ENDLESS 雑記帖

文芸・音楽系文筆業=円堂都司昭のブログ

「小説すばる」8月号

(小説系雑誌つまみ食い 2)

小説すばる 2006年 08月号 [雑誌]

特集 真夏の夜の悪夢!

平山夢明「チャコの怪談物語」

虐待者である父親に歯向かった娘とその男友だちがボコボコにされて、体中を青や紫にしながら逃げてった果てのお話。題名のベタさに釣り合って、類型的な若者像が典型的な若者描写で綴られる。そのように意図的にベタな青春像と、グロくて陰惨で不条理なシチュエーションの同居により、笑わせ悲しませる短編。
いやぁ、純愛です。体の周囲に、妙なものがポタポタとたれるのは、ともかく。

遠藤徹「鬼を撃つ」

鬼を撃った二人組が、そのあと鬼の群れとともに過ごすはめになる。そして、鬼たちの「食」やら「性」やらの日常に接するうち、ふと気づけば自分たちの存在も……。これまた、とぼけた味わいの話。
ちなみに遠藤徹は、「新潮」8月号のほうには大烏を矢で射る場面から始まる「くれーしゃ」を書いていたのであった。そちらは「鬼を撃つ」とは異なり、字面からして重いのだけれど。

絲山秋子「ダーティ・ワーク」第六話 back to zero

ローリング・ストーンズのアルバムタイトル、曲名を借りた連作シリーズ。失業(というより“厭”業)した男の名が「遠井」で、彼を惑わすのが「辻森」。平熱の日常を描いた短編ではあるが、名前からすると、世間から“遠”くへ漂おうとする男が、“森”に迷い込んで……みたいな寓話に読めなくもない。
(関連雑記http://d.hatena.ne.jp/ending/20060118#p1

新井素子「ちいさなおはなし」第一話 おふとん

えっと、新連載です。

お布団さんには、苦労しているお布団さんと、楽をしているお布団さんがいます。

これが、書き出し。久しぶりに彼女の小説読みましたけど、相変わらずの芸風であります。モノの目線で語ることによって、日常世界に“センス・オブ・ワンダー”持ち込むこの書き方。そういえば昔も、ぬいぐるみを「ぬいさん」と呼んでやってましたっけ。
自分も以前には、『ひとめあなたに……』あたりの彼女の作品は好きだったし、吾妻ひでおの描いた“素子さん”イラストに萌えた時期がありました。ただ、現在進行形でこの芸風を読むのは、かつてアイドルだった松本伊代堀ちえみ早見優キューティー★マミーを名乗ってCD出した時に抱いた印象に微妙に近いというか……。

コラム・バラエティ「病気天国」−−米澤穂信

病気をネタにしたコーナー。米澤が選んだお題は、「低血糖」。『夏期限定トロピカルパフェ事件』など、スイーツに関する造詣の深さをみせる作者だけあって、血糖値にも関心を寄せているようだ。

追悼スペシャル 中島らも 天才の遺産

怪作「DECO−CHIN」など、単行本未収録だった短編を集めた『君はフィクション』の刊行にあわせ、組まれた特集。合掌。
(「DECO−CHIN」関連雑記http://d.hatena.ne.jp/ending/20050712#p1

マーティ・フリードマン「J−POP コレ、いいじゃん!」

タイトル通りの連載エッセイ。今回は、ヴィジュアル系を語ってる。
このコーナーのほかにも、「小説すばる」には、乙一×古屋兎丸コラボのコミックが連載されていたり、中島らも書評者の一人に町田康を起用したり、従来の“中間小説誌”とは違う色を見せたいという意欲が感じられる。6月号のロック特集では、くるり岸田繁も登場させてたしね。

  • 18日夜の献立
    • 金目鯛の味噌漬け(もらいもの)
    • ブロッコリーミニトマト(味噌、ねりごま)
    • もやしとワカメのおすまし
    • 玄米ごはん(こぶ入り)
    • 賀茂茄子の漬物(京都で買ったもの)
    • 雑酒