ずっと前から気になっていたのに、なぜか見ていなかった演目「菊畑」(『鬼一法眼三略巻』)を、昨日、歌舞伎座の幕見で観た。
横溝正史『犬神家の一族』で、人形の頭部と佐武のそれがすげ替えられ、生首コロリンとなるシーンがあった。あの菊人形は、犬神家の人々に顔を似せつつ、歌舞伎の「菊畑」を再現したものだった。
これに関しては、洒落たことをしているかたがいらっしゃいます。
http://homepage2.nifty.com/a-to/inugami.htm
犬神家では「斧琴菊」(よきこときく)が家宝とされている。市川崑監督は、尾上菊五郎と斧琴菊のかかわりを意識して、今回のキャスティングをしたのだろう。12月16日公開のリメイク版では、富司純子、尾上菊之助という実際の母子に母子を演じさせている。当代菊五郎の妻、息子である。
(音羽屋の模様は、こちらで紹介されている。http://ta-bu.hp.infoseek.co.jp/otowa_ya/yokikoto.html)
だから、せっかく「菊畑」の舞台を観るなら、音羽屋中心の配役で観たかった気もするが、今月の歌舞伎座では、幸四郎、染五郎の高麗屋父子を主軸に演じられたのだった。今回の配役と、『犬神家』菊人形の配役を並べてみる。
吉岡鬼一法眼−市川佐團次−犬神佐兵衛
虎蔵(実は牛若丸)−市川染五郎−佐清
智恵内(実は鬼三太)−松本幸四郎−佐智
笠原淡海−中村歌六−佐武
皆鶴姫−中村芝雀−野々宮珠世
『犬神家』リメイク版の配役が発表されてから、富司純子、菊之助だけでなく、さらに梨園関係者を増やすとすれば誰がいいだろう? などと妄想していた。その点、佐團次に佐兵衛をやらせるのはよさそうだ。あのおじさん、好色そうだし(笑)。
また、リメイク版の公式サイトを見ても、青沼菊乃を誰が演じるか書かれていない。
http://www.inugamike.com/index.html
菊之助の姉、寺島しのぶを菊乃にはめるとか、気のきいた配役になっているのだろうか。
菊之助以外ならば染五郎を佐清にして、松たか子を珠世に迎え、兄妹で倒錯的組み合わせにするのもいいかも。そのうえで、染五郎と以前すったもんだがあった寺島しのぶを小夜子役にするとか。あるいは、染五郎、たか子の地味な姉、松本紀保を小夜子に当てるのもありか。いずれにしろ、嫉妬のドロドロ感はかなり出せると思うが。
(関連雑記http://d.hatena.ne.jp/ending/20060406#p1)
リメイク版公開にあわせ、市川崑『犬神家』オリジナル版も、コレクター向けのものが出るらしい。
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舞台の「菊畑」のほうは、鬼一の真意を探るため、鬼三太と牛若丸が身分を隠して館に入り込む話。庭の菊の華やかさ、「勧進帳」的な主従のやり取り、義太夫にあわせた音楽的なセリフ回しなど、楽しゅうございました。
芝雀は、風情が雀右衛門に似てきたね。