ENDING ENDLESS 雑記帖

文芸・音楽系文筆業=円堂都司昭のブログ

米澤穂信の“青春以前小説”

(小説系雑誌つまみ食い 9――「活字倶楽部」秋号、「小説すばる」11月号)

活字倶楽部ASIN:B000JLSUE8ンタヴューが載っている(「作家登場」)。デビュー前からの歩みをたどる内容で、近作『ボトルネックASIN:4103014717

自分の青春小説の一次決算として書いてみようと思いました。

と執筆動機を語っていた。
一方、「小説すばる」にも米澤インタヴューが掲載されており、『ボトルネック』に関してさらに突っ込んだ発言をしている(「著者に聞く!」)。
小説すばる 2006年 11月号 [雑誌]
娯楽小説誌(昔流にいえば“中間小説誌”)は、中高年向けっつうか、おっさん向けのイメージが強い。そのなかで、リニューアルしたばかりの「小説すばる」は、企画や人選などの面で、わりと読者層拡大への意欲がみられる雑誌だと思う。とはいえ、どんな小説でもラノベと同列に読む「活字倶楽部」の若い読者層が、一般娯楽小説誌にまで手を伸ばすことは少ないだろう。
なので、かつくら読者にも伝わればいいなと思いつつ、「小説すばる」から米澤インタヴューの一部を引用してみる。

青春小説とは本来、主人公がいかにして自らを正当化していくかを描くものですが、彼はまだ自己を認識しているつもりになっているだけで、自分と向き合えてもいない。『自分探し』の旅の準備さえ整っていないんです。いわば青春以前小説ですよ。

ここで、“正当化”という言葉が選ばれている点が、僕には面白い。『ボトルネック』は、米澤にしてはミステリ色を抑えた作品だが、上記の発言はとてもミステリ作家らしい。犯人は自分の行為をいかに正当化するか、それを暴く探偵は自らの立場をいかに正当化するか――という要素が、ミステリ小説には内在している。その種の正当化と、青春小説における自己正当化のテーマを重ね合わせたものが、“青春ミステリ”になるわけだね。
(関連雑記http://d.hatena.ne.jp/ending/20060711

  • 2日夜の献立
    • ひえのコロッケ、かにクリームコロッケ、玉ねぎフライ
    • ひじきと切干大根の炒めもの(しょうゆ)
    • ごぼう、大根、にんじんの炒めもの(ねりゴマ、しょうゆ)
    • 玄米ごはん
    • 雑酒、チューハイ、赤ワイン