ENDING ENDLESS 雑記帖

文芸・音楽系文筆業=円堂都司昭のブログ

ディズニー関連の小説

(小説系雑誌つまみ食い 8――「野性時代」11月号)

東京ディズニーシー5周年記念作品」と銘打って、同誌に狗飼恭子が『Sea of Dreams』という連作の第四話、第五話を寄せている。
http://www.kadokawa.co.jp/sp/200310-02/main.html
当然、第一話から第三話も存在したわけで、それらは同誌10月号に掲載されていた。
『Sea of Dreams』は、東京ディズニーシーがWebシネマ化しており、ディズニー公認の小説である。
http://5th.tokyodisneyresort.co.jp/web/cinema.html

歌野晶午『世界の終わり、あるいは始まり』

一方、同じ角川書店からは、ちょうどこの時期、ディズニーに関連する本がもうひとつ出ていた。歌野晶午『世界の終わり、あるいは始まり』の文庫化だ(親本は2002年刊)。
小学六年生の息子が、子どもの連続誘拐殺人事件にかかわっているのではないかと、疑いを抱いた父親の物語。世界が終わるかのように思いつめたこの父親は、さして乗り気ではない息子、妻、娘を連れ、家族旅行に出かける。その行き先が東京ディズニーランド。そして、日帰りできる距離なのに、現地のホテルにわざわざ宿泊し、一家でフランス料理のフルコースを食すのだ。精神的に追いつめられた父親にとって、気分はもう、“最後の晩餐”……。
こうした暗い感情の受け皿、はけ口としての、ディズニーリゾート。とても、ディズニー公認にはなりそうにない小説である。でも、自分の家族が崩壊する予感におびえた父親が、最後にもう一度、家族としての楽しさを(嘘でもいいから)味わいたいと思ってすがる先があそこだというのは、ありそうなこと。特に、「嘘でもいいから」という感覚を引き受けてくれそうなのが、ディズニーなのである。――と評価しても、ディズニー側はたぶん、嬉しくないだろうが(笑)。
世界の終わり、あるいは始まり (角川文庫)

  • 1日夜の献立
    • さんま(大根おろし、しょうゆ)
    • 小松菜としめじの炒め(ごま油、ポン酢)
    • 豆腐と水菜の味噌汁
    • 雑酒、チューハイ