東京都現代美術館で「マルレーネ・デュマス――ブロークン・ホワイト」を見た。
微妙に歪な顔、滲んだ肌の色――という絵ばかりだ。
特に、人の顔をバーッと並べた展示、ほとんど裸の少年の姿を並べた展示に凄みがある。まるで、前者は遺影だけが収録された卒業アルバム、後者は水死体の魚拓シリーズ(人拓か?)といった感じ。
また、展示スペースの白い壁が静謐さを醸し出し、絵に描かれた人たちの生気の欠落ぶりをより強調していた。
一つひとつの絵は、各人の“個性”ともいえる顔の左右の不均衡を印象づける描きかたがされている。しかし、それが死体安置場のごとく並べられることで、無個性な“モノ”と化してしまう。――そのような告発の手順は、いかにも、アパルトヘイト下の南アフリカで育ったアーティストらしい。