ENDING ENDLESS 雑記帖

文芸・音楽系文筆業=円堂都司昭のブログ

『ロンドンハーツ』――「芸人“恋愛”小説大賞」の庄司智春

テレビ朝日系『ロンドンハーツ』19日夜放送分。
http://www.tv-asahi.co.jp/londonhearts/
劇団ひとり陰日向に咲くasin:4344011023品川祐(ヒロシ)『ドロップ』asin:4898151833千原ジュニア『14歳』asin:4062137992ふかわりょう『DSJ 消える街』asin:479665805X、あるいは年長で島田洋七などなど、芸人小説ばやりの昨今である(リリー・フランキーだって、ココリコと一緒に番組出てる人ってイメージだし、お茶の間的には芸人の同類だと思う)。
そこで、アンガールズ田中卓志安田大サーカス・クロちゃん、品川庄司庄司智春の3名をだまし、90日間で50〜60枚の恋愛小説を書かせたという『ロンハー』の企画。このうち、田中とクロちゃんの小説はまるでダメだったものの、庄司智春「花のことば」にはゲストが泣いた――という展開だったわけだが……。
紹介された「花のことば」の内容は、構成もそこそこだし、要所要所で花言葉を使う工夫といい、あの庄司に書けるとはとても想像できない。これが藤本美貴との共作だというなら、まだしも(笑)。
それにしても驚いたのは、番組内だけでなく、ネット上で庄司の小説に泣いたという感想がけっこう見られたこと。あんなわかりきった内容でも、泣く人は泣くわけですね。
花屋に勤める40歳の男が、女子高生に抱いた淡い恋の物語。2人はそれぞれ、同じ高校の夜と昼に通っており、同じ机を共有していた。その机に熊の絵を描き、言葉を書き込むことで文通めいたやり取りが始まる。ところが、そのやり取りに若いイケメンが割り込んで、なんだかんだで40男は死んじゃうけど、彼の想いは彼女に理解されましたよー、ってな話。
で、『ロンハー』では当然、芸人3名の小説執筆風景も盗み撮りしていたわけだが、他2名とは異なり、庄司だけがケータイで書き、それを受信した編集担当がまとめていた。この執筆状況と小説内容から、類推されることがある。
ケータイ小説の大ヒット作で映画化もされる美嘉『恋空 切ナイ恋物語asin:4883810453は、番号交換の場面から始まっていた。ケータイを手にしている読者が、ある時間、実際に誰か恋人・友人と連絡をとり、つながろうとする代わりに、番号交換をして人と人がつながり始める小説を読み出す。リアル友人とのつながりの休止空白時間帯に、代償行為のようにしてつながりの物語に向かう。――という構図で、ケータイ小説『恋空』は消費されるようになっていた。
一方、バラエティ番組内において、庄司「花のことば」の執筆風景は、そんな『恋空』と似た構図で提示されていた。作者は、ケータイで誰かと通信する代わりに(ミキティとの連絡を我慢して?)、机の落書きを使った文通の物語を綴っていたのだから……。やはり、リアルの通信の不在を、フィクションの通信で穴埋めしたみたいな図式だろう。
「花のことば」は、「別冊カドカワ」(7月18日発売)に掲載されるそうだが、こうした執筆背景を考えると、紙の雑誌よりケータイで配信したほうがフィットしそうな感覚だし、より反応を得られるような気がする。


ケータイ(あるいはミクシィとか)でのつながりに対する依存度が高い人ほど、この種のわかりきった物語(=ようやくつながりました/せっかくつながれたのに切れてしまいました――といった類の恋愛/親子小説)で泣きやすい。そのような気がしてならないのだが、どこかにその種の調査報告はあるだろうか。
(関連雑記http://d.hatena.ne.jp/ending/20070608#p1

SNSの研究 あなたはまだ「マイミク」のことが好き?

SNSの研究 あなたはまだ「マイミク」のことが好き?


(6月22日付記:東浩紀が「ゲーム・プレイヤーの視点−ライトノベルの読書」の結びつきに関しやってみせた「環境分析」を、「ケータイ使用者−ケータイ小説」に対してもやってみたらどうだろう、ということを以前書いた。
http://d.hatena.ne.jp/ending/20070510#p1
で、速水健朗が“ケータイ小説に出てくるケータイ”に着目した読みを披露していたことを、今日になって知った。
http://d.hatena.ne.jp/gotanda6/20070617
こういうまともな言及は、ケータイ小説については少ないと思う。
間もなく『このケータイ小説がすごい』asin:4777106632というガイドが出るようだけど、この種の本をたくさん送り出してる「魔法の図書館」監修だから、本の形をした自社広告みたいなものだろうし……。
http://ip.tosp.co.jp/Portal/c.asp?i=BOK00MIL99

  • 18日夜の献立
    • かつおのさしみ(しょうが、しょうゆ、香酢。熱したゴマ油、焦がしにんにく。新玉ねぎスライス)
    • ゆでキャベツ(梅酢、マヨ)
    • じゃがいもの味噌汁
    • 発泡酒、冷酒
  • 19日昼の献立
    • 中華風スパ(ごま油、にんにく、長ネギ、豚挽き肉、こしょう、しょうゆ、香酢、ラー油)
  • 19日夜の献立
    • 豚とキャベツ(少なめの欧風だしで蒸し煮に近い感じ。しょうが、にんにく、こしょう)
    • ほうれん草のおひたし(ポン酢)
    • わかめときゅうりの冷やし味噌汁(しょうが、長ネギ)
    • 玄米ごはん
    • すいか
    • 冷酒