ENDING ENDLESS 雑記帖

文芸・音楽系文筆業=円堂都司昭のブログ

「シルク・ドゥ・ソレイユ」

(「ディズニー/浦安的風土記」その3 2005/04/16記)
東京ディズニーリゾートの運営会社オリエンタルランドは13日、カナダのサーカス「シルク・ドゥ・ソレイユ」の専用劇場を2008年度に開設すると発表した。場所は、ディズニーリゾートの商業施設イクスピアリの駐車場内だという。
ディズニーリゾートの基本コンセプトは、その空間をとにかく“ディズニー的な”夢々しさで徹底的に満たすことだったはず。既存の東京ディズニーランドに加え、東京ディズニーシーイクスピアリを増設する過程では、東京の宝塚劇場を舞浜に持ってくる案も一時期は浮上した。宝塚歌劇に関しては結局、日比谷に新劇場が設けられたが、これはディズニー・ファン、宝塚ファンの双方にとって幸せな落着だったと思う。それぞれのファンは、それぞれの夢のスタイルに入り込む“異物”を好まないはずだから。
その点、「シルク・ドゥ・ソレイユ」はあちらの芸能だし、日本独特の芸能である宝塚ほどには、ディズニーにとって“異物”ではないかもしれない。創作劇でアクロバット中心だという「シルク・ドゥ・ソレイユ」ならば、あるいは演目にミッキーを出演させてしまうアレンジだって可能だろう。
とはいえ、今回の発表にオリエンタルランドの危機意識を感じてしまったのは、僕だけか? 今年、香港に新たなディズニーランドがオープンする予定であるほか、韓国や上海にも誘致の噂がある。いずれにしても、アジアから舞浜への客は減る方向にあるわけで、「シルク・ドゥ・ソレイユ」の誘致も、将来の客足を意識してのテコ入れと思える。
気になるのは、オリエンタルランドが、“ディズニー的な”夢々しさの自己完結性に関して、年々、ガードが“ゆるく”なってきているように思えること。初期の東京ディズニーランドにあった自己完結性に比べれば、東京ディズニーシーイクスピアリは“開放的”になっている。浦安地元住民を近づけない空気は崩していないものの、エンタテインメント空間としての徹底性や完成度は変化してきている。
象徴的なのは、ディズニーリゾート内を一周するモノレール(ディズニーリゾートライン)を作ってしまったこと。モノレールの窓からは、なんとバックステージの一部が見えているではないか。楽屋裏を決して見せず、夢だけを提供することがウォルト・ディズニーの発想だったはずで、そこにこそディズニーランド特有の面白さがあった。だから、近年のオリエンタルランドの甘めの“設計意識”については、若干疑問を覚えている。
……とか、なんとか言っても、実際に「シルク・ドゥ・ソレイユ」が来たら、自転車をこいで見に出かけようと思ってますけど(笑)。