ENDING ENDLESS 雑記帖

文芸・音楽系文筆業=円堂都司昭のブログ

ケータイ小説とTSUTAYAと夕刊紙・スポーツ新聞

旧聞になってしまうが、今月最初の週に東京ビッグサイトで催された東京国際ブックフェアに行ってきた。いろいろ興味深い展示はあったが、「書店に未来はあるのか! 大型書店から街の本屋まで、激変期の書店経営者が徹底討論」と題されたシンポジウムにおいて、あるパネリストの言ったことが印象に残っている。
高野幸生・TSUTAYA商品本部BOOK企画グループリーダーの発言の一部である。

 TSUTAYAはレンタルヴィデオを展開する企業であり、この7月時点で北海道から沖縄まで1,300店ある。そのなかで、本の売り場があるのは750店舗程度。
 新商材の開発ということでは、昨年、ケータイ小説大賞に協賛させてもらった。ケータイ小説がなぜ売れるかといえば、今まで本屋に来なかった子たちが来て買っている現象だから。日本で情報を伝えるもののうち、書籍は縦書きだが、他はだいたい横書きであり、それが若い人たちには受け入れられにくかったのではないか。それに比べ、ケータイ小説は横書きであることによって、若い子たちが書店に来るようになったと感じている。
 協賛したケータイ小説大賞では、無理を言ってTSUTAYA賞も作らせてもらった。TSUTAYAは若い客が多いので、ケータイ小説のシェア10%くらい販売させてもらっている。新しい若い客が来るような店を作ることが、書店の未来につながっていくのではないか。

ケータイ小説市場におけるTSUTAYAの強さを、このように来店客の若さで説明していた。
でも、来店客の若さだけが理由ではないだろう。DVD、CD、ゲームなど、TSUTAYAの他の取扱い商材には関心があるものの、普段は本を読まない層。それがケータイ小説に手をのばしたという、複合店ならではの強みがあるはず。本しか扱わない普通の書店で、TSUTAYAほどの成績をあげられたとは思えない。
ケータイ小説は、本の形に作られてはいるけど、横書きであることや文体など、これまでの「本」っぽくはない。そうした性格が、DVDやゲームなど他のメディアにひかれて来店した客を誘引した。そういうことではないか。


一方、電子出版を手がけるボイジャーが、展示ブースで配布していた小冊子「新しい出版の時代 電子の本を出版しませんか」に面白い記述を見つけた。ケータイ小説が若者に流行っている理由を分析した部分である。

 夕刊紙とかスポーツ紙に必ず芸能欄がありますよね、オヤジさんのために必ずエッチな小説も載っています。ケータイも同じで、そんなものが定番として用意される時代になったということでしょう。エッチ系小説がケータイでは盛んなようです。
 ケータイの若者も、夕刊新聞のオヤジさんも、根っこのとこでは同じなんでしょうネ。ただこれって、とても正直な人間の本音のところじゃないかと思います。

確かに新聞は、以前は電車内における“携帯”メディアの王様だったし、その機能の一部が現在のケータイに移植されたと考えると、理解しやすい。
それにしても、この「夕刊紙・スポーツ紙=ケータイ」論の内容は、「オヤジギャル」というかつての流行語を思い出させるな。なんだか、TSUTAYAが分析した読者像の「若さ」とは遠いですけど……。


第1回日本ケータイ小説大賞http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/gakugei/etc/novel/
TSUTAYA賞↓

プリンセス

プリンセス

(関連雑記http://d.hatena.ne.jp/ending/20070620

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    • 「エンタの裁判様」(長嶺超輝『裁判官の爆笑お言葉集』asin:4344980301に関するコラム) → 「ROCKIN'ON JAPAN」8月号)
  • 帯に推薦文を寄せました。