人の名前を書けばそいつが死ぬノートを使い、世界中の悪人を駆除しようとする大掛かりな設定が、たいした助走もなくいきなり思いっ切り展開されること。とにかく名探偵なんだ疑問の余地はないんだって形で強引に登場するキャラ。この「初期設定」のドライヴ感でグイグイ押すあたりが面白い。清涼院流水の『コズミック』ISBN:4062646498『カーニバル』連作ISBN:406273642Xーズにあった可能性を発展させたのが、原作・大場つぐみ、漫画・小畑健のこの作品という風に感じる。実際、原作=清涼院説をネットでちらほら見るけど、これってホント、清涼院以上に清涼院だと思う。
企画優位の“清涼院的可能性”から見れば、JDCシリーズのトリビュートを書いた舞城王太郎や西尾維新は、「一人称」の魅力というある種の人間性の“文学”に先祖がえりした存在ともいえる。また、清涼院流水大塚英志箸井地図によるJDCコミック『探偵儀式』ISBN:4047136093、N月R太郎なんてキャラの命名に端的に表れている通り、悪い意味での批評性やプロレス性がエンタテインメント性にブレーキをかけている。それらに比べると『DEATH NOTE』は、実に正しく“清涼院的可能性”をやってくれている。
3巻でミサが出てきてラブコメ・モードが加えられた時には、萌えサービスとは思いつつ、初期設定のドライヴ感が崩れちまうんじゃないかと心配した(恋愛→内面→“文学”みたいな気を回しすぎた懸念を抱いたのです)。でも、5巻以降、緊迫感が回復してるし、今後も期待してます。