ENDING ENDLESS 雑記帖

文芸・音楽系文筆業=円堂都司昭のブログ

建石修志展

虹の獄、桜の獄

虹の獄、桜の獄

個展の案内状には〔本に微睡む 或いは 紙に浮かぶ夢〕とあった。本の装画を多く手がけてきた画家にふさわしい誘い文句。竹本:文、建石:画『虹の獄 桜の獄』が刊行された直後の個展なので、この本に収められた作品を中心にした内容だった。
油彩とテンペラの混合技法による絵は、印刷で見るよりはるかに立体的に迫ってくる。硬質な幻想絵画である。洋館の白い外壁と少年の頬が、あえて同種の鉱物的な滑らかさで描かれていることが、非現実的な印象を醸し出すのだろうか。
対象の“肌合い”をめぐる建石の鋭敏な感覚は、鉛筆画でよけい際立つ。特に、羊皮に鉛筆で画いた作品は、近くで見ると強く芯を押し付けた部分がへこんでおり、傷跡を思い出させる。まるで、かさぶたがとれたばかりのまだ引きつった皮膚。生々しい。それでいて鉛筆の黒はメタリックにも感じられるのだから、目の前に立つとなんとも不安な心持ちになる。この羊皮の作品を見られただけでも、行ってよかった。
(銀座 青木画廊で10月29日までhttp://cherubim-tateishi.site.ne.jp/news/05aokiex.html