ENDING ENDLESS 雑記帖

文芸・音楽系文筆業=円堂都司昭のブログ

石山透著『新八犬伝』

新八犬伝 上の巻
昨日、親戚と会うため宇都宮に出かけた。そこの本屋で、『新八犬伝』が復刊されているのを見つけた。なんとも、懐かしい。僕は、もとの本を未だに大切に持っている。
石山透といえば、筒井康隆時をかける少女』が、かつてNHKで『タイムトラベラー』としてドラマ化された時の脚本家。
復刊された『新八犬伝』は、滝沢馬琴の原作を石山が1970年代にテレビ人形劇向けに脚本化し、自らノベライズしたものだ。この脚本は、浄瑠璃、講談、落語といった日本の語りの伝統を、雰囲気勝負で子ども向きに自由にアレンジし、取り入れたのが特徴。現在、NHK教育テレビで、伝統芸能の人が子ども向けの日本語番組をやっている。あのような〝伝統芸能ごっこ〟のノリを遡れば、『新八犬伝』に行き当たるといってよい。
そして、石山透が作った新時代の〝語り〟芸を、あの人形劇では坂本九が語り手となり見事に演じたわけだが、ノベライズは逆にその口調を写すことを目指した文体になっている。つまり、明治期の講談速記本みたいな線であり、本の作りかた自体も、ある種、伝統のパロディみたいになっていたわけ。
(関連雑記http://d.hatena.ne.jp/ending/20060828#p1