ENDING ENDLESS 雑記帖

文芸・音楽系文筆業=円堂都司昭のブログ

里村明衣子のこと

書店で「LADY’s リング」という新雑誌を見かたので、なんとなく手にとって開くと、いきなり里村明衣子が眼帯したグラビア写真が現れたので驚いた。10月の試合で、眼窩底骨折をしたのだそうだ。知らなかった。
http://blog.livedoor.jp/lgc2007/

長与千種フレディ・マーキュリー

先週末の深夜、仕事の合間にコーヒーを飲みつつケーブルテレビのチャンネルをいじっていると、たまたま女子プロレスの中継に行き当たった。長与千種がプロデュースした「デビル雅美30周年記念興行」を、GAORAが放映していたのだ(9月30日の試合)。仕事から逃避し、見入ってしまった。
当日は会場に女子ばかりのバンドを入れていて、生演奏で選手を迎え入れる趣向だった。メインイベントの入場シーンでは長与が歌ったのだが(アース・ウィンド&ファイアー〈ブギー・ワンダーランド〉とか)、デビル雅美が出てきた時の歌が凄かった。クイーンの〈ウィ・ウィル・ロック・ユー〉。ドラムのドン・ドン・タンだけで進行するあの曲を、怪しい音程&怪しい英語で長与が歌う。客席に合唱を要求するが、客はほとんど応えない。シンプルな曲であるだけに、一人で歌う長与の下手さがもうむき出しである。
ミクシィのクイーン・コミュなどを覗くと、倖田來未がCMで〈ウィ・ウィル・ロック・ユー〉を歌ってるのが許せないと怒っているフレディ・ファンがいる。そういう人が長与の歌を聞いたら、激怒のあまり酸欠を起こすだろう。
ちなみに本日11月24日は、フレディ・マーキュリーの命日である。合掌。

女子プロレス界のロストジェネレーション

デビル雅美豊田真奈美アジャ・コングダイナマイト関西堀田祐美子ボリショイ・キッド、KAORU……。「デビル雅美30周年記念興行」では、こういった面々が10年前にすでに完成させていた芸風を今もリングで頑固に貫いていて、感動してしまった。
北斗晶VS.神取忍などを軸に、女子プロレスの団体対抗戦が盛り上がっていた90年代前半、僕は地上波で全日本女子プロレス、WOWOWでJWPを見て、「女子プロレスグランプリ」、「LADY’S ゴング」などの雑誌を買い、3〜4ヵ月に一度くらいは試合会場に行く――といった感じのファンだった。だから、「デビル雅美30周年記念興行」の光景は、素直に懐かしいものだった。
で、特に印象深かったのが、6人タッグマッチで出場した輝優優、加藤園子カルロス天野里村明衣子永島千佳世、植松寿絵と、ボリショイ・キッドと戦った日向あずみ。彼女たち7人は、女子プロレスが対抗戦で盛り上がった直後に各団体に入門したのはよかったものの、団体の内紛、主力選手のフリー転向、新団体乱立、自主興行のやり過ぎなどいろいろあって、あっという間に業界が斜陽化してしまいました――という貧乏くじを引いた世代である。僕自身もそのような引き潮とともに、自然と、女子プロレスから遠ざかったのだった。
朝日新聞は、社会に出る時と不況による雇用悪化が重なった25〜35歳を「ロストジェネレーション」と呼んだasin:4022503092。喩えていうなら、6人タッグ出場選手&日向あずみは、女子プロ界のロストジェネレーションだろう。そんな彼女たちが、わりのいい商売でもなかろうに、今でも好き好んでどっすんばったん頑張ってる姿に感動してしまった。
特に、その後、新団体「センダイガールズプロレスリング」を立ち上げた里村明衣子(愛称メイメイ)の勇姿には、感慨を覚えた。
かつて里村は、何度も負かされていたアジャ・コングに対し、愚直にデスバレーボムを連発することでやっと初めて勝った。実は僕は昔、自分が辛い状況になるたびに里村がアジャに初勝利した試合のヴィデオを見直し、「ひたむきにやっていればいつか結果は出るんだ」と己に言い聞かせながら涙ぐむということをやっていた。
里村さんにはお世話になりました。というか、里村のプロレスカードは、今でも壁に飾ってあります(笑)。


んなわけでつい1週間前、元気な里村の姿をテレビで見たばかりだったから、「LADY’s リング」で骨折した彼女の写真を見て驚いた。でも、本人のブログを読むと、こんな状況でも今やれることを精一杯やっているようだ。本当にメイメイは頑張り屋さんだねえ。
http://www.sendaigirls.jp/cgi-bin/html/satomura/satomura.cgi
彼女の早い試合復帰を願うとともに、来年は久しぶりに女子プロレスの試合を見に行こうと決めた自分だった。