ENDING ENDLESS 雑記帖

文芸・音楽系文筆業=円堂都司昭のブログ

禁煙10周年

私が煙草を吸っていたのは、セブンスターやマイルドセブンが250円だった時までだから、そこから値上がりした2003年に断煙したことになる。10年周年記念なので、私の禁煙体験をふり返ってみる。

それ以前から何度も禁煙しようとしていた。煙草一箱分を一本ずつ全部ハサミで切って捨てたり。でも、数時間後にはゴミ箱から拾い集め、セロテープでつないで吸っていた。少ないこづかいで買ったのだから大切に吸わなきゃ、って自分に言い訳した。

でも、煙草一箱が250円よりも値上がりするのは、私のふところの限界を超えていた。今度こそ本当にやめねばならぬと追いつめられた。

禁煙した直後は口さびしいものだから、煙草のかわりにいろいろなものを口にした。味というよりも、息をする時の煙に相当する吸い心地はき心地が欲しかったので、メントール系のガムや飴を多用した。禁煙用のパイプも吸った。

でも、同じ味ばかりだと飽きる。なので、都こんぶをしゃぶったり、ポテトチップスの小袋を買ったり。煙草の値段以下のもので、口を満たす代替品をあれこれ試した。禁煙の理由が、健康志向というより金銭的余裕の問題だったため、そうなったのだ。

妻がキッチンばさみで適当な大きさに裁断し、ストックしていたダシとり用のこんぶを、1日で煙草一箱分=20枚しゃぶって怒られたこともある。完全禁煙までの道のりは遠い。

禁煙用の煙草代替品として、ついにたどりついたのが、カレールー(ジャワカレー)だった。厚い板状になっているそれを、チョコレートのように割り、ひとかけらを口に放り込む。すると、それなりの時間、煙草の煙に匹敵するか凌駕する呼吸の手ごたえが、鼻孔や喉を満たすのだ!

煙草のかわりにカレールーをしゃぶるだなんて、とダシとり用こんぶをしゃぶった時以上に妻から激怒された。本人としても、煙草以上に体に悪いと思った。本来溶かしてつかうものを原型のまま味わっているのだから。

なにしろ味が濃いうえ極度に塩辛い。なめ続けたら寿命が縮む……。そして、なにも口にしなくなった。禁煙達成である。今では、煙草への欲求はないが、味を覚えてしまったダシとり用こんぶは、たまにしゃぶってしまう。とはいえ、カレールーをなめたくなった時は、我慢する私なのだった。

早稲田文学6 通常版
ちょっとかしこまった書きかたをしすぎたな……。