「文蔵」最新号の特集「「医療小説」の進化を追え!」。「危機の現代こそ読むべき名作15選」(末國善己)が、新型コロナの話題から始めて奈良時代の天然痘流行を描いた澤田瞳子『火定』へと一気に昔へ遡るあたり、人類と感染症のつきあいの長さを思い知らされてめまいがする。
コロナの影響で今月刊の小説誌は合併号が多い。「小説現代」最新号もそう。「緊急特集 この災厄に思うこと」で11人がコロナ禍についてエッセイを書いている(作家ばかりでなく、四千頭身の後藤拓実も。彼は同誌に連載を持っている)
同号のコロナ禍をめぐるエッセイとしては、特集以上に印象的なのが新井見枝香の連載「きれいな言葉より素直な叫び」第十二回。9年前の3月11日を回想しつつ緊急事態宣言前の同日のストリップ劇場への出演をふり返っている。
そこで語られる人との距離感。コロナのせいで、人々はこうしたライヴ体験の機会を奪われたのだなとあらためて思う。
少し前、アイドルや元アイドルによる小説やエッセイについて書く機会があった。それらの多くで「見る-見られる」や自意識がテーマになっていたことから、新井の近況を綴った連載エッセイにも興味を持ち、遅ればせながら読み始めたのである。書店員として有名なこの人が、ストリップ・デビューしたことには驚いたのだった。
最近の自分の仕事
-古川日出男『おおきな森』、麻生享志『『ミス・サイゴン』の世界 戦禍のベトナムをくぐり抜けて』の紹介 → 「小説宝石」7月号 https://www.bookbang.jp/review/article/628794