ENDING ENDLESS 雑記帖

文芸・音楽系文筆業=円堂都司昭のブログ

小説雑誌編集長インタビュー・シリーズ

-最近の自分の仕事

「小説トリッパー」編集長・池谷真吾が語る、文芸誌の領域 「境界線はなくなり〈すべて〉が小説になった」|Real Sound|リアルサウンド ブック

 

「すばる」編集長・鯉沼広行が語る、創刊50年の歴史と変化 「文芸誌としてできることをしたい」|Real Sound|リアルサウンド ブック

 

上記2本の取材を含め、今年は小説雑誌編集長のインタビューをシリーズとして行ってきた。以前の3本は次の通り。

 

『文藝』編集長・坂上陽子が語る、文芸誌のこれから 「新しさを求める伝統を受け継ぐしかない」|Real Sound|リアルサウンド ブック

 

『群像』編集長・戸井武史が語る、文芸誌と社会 「“時代”への問題意識を表現できる媒体に」|Real Sound|リアルサウンド ブック

 

『SFマガジン』編集長・塩澤快浩が語る、SFが多様性を獲得するまで 「生き延びることしか考えてきませんでした」|Real Sound|リアルサウンド ブック

 

また、このインタビュー・シリーズを補完するような文芸に関する解説記事も書いてきた。

 

純文学雑誌は転換期を迎えているーー『文藝』リニューアル成功が浮き彫りにした重い課題|Real Sound|リアルサウンド ブック

 

阿部和重、町田康、赤坂真理……“J文学”とは何だったのか? 90年代後半「Jの字」に託された期待|Real Sound|リアルサウンド ブック

 

IT革命、ケータイ小説、ライトノベル……“ゼロ年代”に文学はどう変化した? 文学批評の衰萎と女性作家の台頭|Real Sound|リアルサウンド ブック

 

 文芸に関する一連のシリーズで繰り返しテーマにしてきたのは、純文学とエンタメ小説、エンタメ小説のなかでの一般文芸とライトノベル、批評の居場所、ジェンダーといったことがらだ。

 私がこういうことを考えるようになったのは、エンタメ系の江戸川乱歩賞を受賞した栗本薫『ぼくらの時代』と、純文学の群像新人文学賞評論部門を受賞した表題作を収めた中島梓『文学の輪郭』を1977年にたて続けに読んだことが、出発点となっている。後者の評論では群像新人文学賞芥川賞を受賞した村上龍限りなく透明に近いブルー』、埴谷雄高の形而上小説『死霊』と並べて、同名戯曲に基づくつかこうへい『小説熱海殺人事件』も扱われ、本のなかには他にも筒井康隆西村寿行などが登場する。そうして純文学とエンタメを横断する内容で『文学の輪郭』は話題になったのである。ふり返ってみれば、私が同時代の評論家に注目したのは、中島梓が初めてだった。このことは、ミステリなどエンタメを扱うとともに純文学についても書く評論家としての私の姿勢に影響を与えていると思う。

 しかし、1970年代後半の『文学の輪郭』以後も21世紀の今日に至るまで純文学とエンタメの境界は軟化したけれどなくなったとはいえないし、中島梓のような女性の文芸評論家は少ない状況が続き、男中心のホモソーシャルな論壇が常態化していた。とはいえ、そこにも変化はあるのではないかと考え、取材しているのが一連のインタビューだ。2021年もさらに取材を重ね、いずれまとまった形にしたいと思っている。来年もおつきあい願いたい。

 

 なお、思考の出発点となった中島梓栗本薫については、約20年前に次のような論考を書いていたので紹介しておく。

 

選別の中のロマン革命――中島梓・栗本薫論|円堂都司昭|note

 

文学の輪郭 (講談社文庫)

文学の輪郭 (講談社文庫)

 

 

 

新装版 ぼくらの時代 (講談社文庫)

新装版 ぼくらの時代 (講談社文庫)