ENDING ENDLESS 雑記帖

文芸・音楽系文筆業=円堂都司昭のブログ

法月綸太郎『生首に聞いてみろ』とキング・クリムゾン

生首に聞いてみろ
法月綸太郎の久しぶりの長編『生首に聞いてみろ』が刊行された。その章題は、いずれも英語になっている。
第一部FraKctured(要注目!)、第二部Happy with What You Have to Be Happy with、第三部Dangerous Curves、インタールードFacts of Life : intro、第四部Facts of Life、第五部Level Five、第六部Eyes Wide Open、エピローグCoda : I Have a Dream
これらの英語は、いずれもキング・クリムゾンの曲名からとられており、第一部とエピローグの章題になった2曲は《ザ・コンストラクション・オブ・ライト》ASIN:B00004TT94、それ以外は《ザ・パワー・トゥ・ビリーヴ》ASIN:B00007K5C1る。法月は以前にも、クリムゾンから曲名を借りた短編「土曜日の本」(『法月綸太郎の冒険』に収録。曲は《太陽と戦慄》収録)を発表していたほか、『ふたたび赤い悪夢』(92年作。同名曲は《レッド》収録)を刊行しており、その長編の章題も第一部Starless and Bible Black、第二部Fracture(!)と、やはりクリムゾンで固めていた(2曲とも《スターレス・アンド・バイブル・ブラック(暗黒の世界)》収録)。
クリムゾンの総帥ロバート・フリップは、〈FraKctured〉(00年作)は〈Fracture〉(74年作)のリニューアル発展形だと解説していた。なので僕は、『生首』最初の章が〈FraKctured〉と名づけられていたことからは、久しぶりの新作長編でシリーズの発展形を目指した法月の意欲を感じとった。この小説自体の読後感については、いずれ機会を見つけて20枚強の評論にまとめるつもり。
ちなみに、実質的に“太陽と戦慄part5”である〈Level Five〉は、フリップ、エイドリアン・ブリュー、パット・マステロット、トレイ・ガンというラインナップでは、最高の曲だったと思う。さて、トレイ・ガンとトニー・レヴィンが交代した後のクリムゾンって、いったいどうなってるんだろ?

追記:〈FraKctured〉ってのは変なつづりだが、これは「King Crimson」というバンド名にひっかけて単語のなかの「c」を「Kc」に置き換える遊びをフリップが始めたためです。念のため。