ENDING ENDLESS 雑記帖

文芸・音楽系文筆業=円堂都司昭のブログ

島田荘司『龍臥亭幻想 上・下』

龍臥亭幻想 上 (カッパノベルス)
読了。雪中に鎧武者が暴れ回る和風幻想と、旧日本軍の肉体縫合研究を組み合わせた島田荘司らしい道具立て、ではある。
そして、口絵およびカバー(というか帯というか)を飾った横尾忠則の絵に、ちょっとびっくりした。上・下巻両方に横尾のシリーズ作品が使われている。白や赤の色彩が乱舞するなかに裸女がいる構図は、吹雪の山村で展開されるこの古風な連続殺人劇にとてもよく似合っている。ところが、絵のタイトルを見て驚いた。
上巻「Lisa Lyon in Nishiwaki,April 18,1984(No.9)」、下巻「同(No.1)」
リサ・ライオンって、80年代にアーノルド・シュワルツェネッガーとよく並べて語られた女性ボディビルダーで、ヘルムート・ニュートンやロバート・メイプルソープの被写体になってアート方面でも有名になった人でしょ? ガッシリした筋肉美女ぶりを誇示していた思いっきり洋風の存在じゃないですか。「Lisa Lyon〜」という英語タイトルさえ目にしなければ、僕は、鎧武者が出てくる小説内容に呼応して雪女的な和風幻想を絵で添えたものと思い込んでいたかもしれない。大どんでん返し!
肉体をマシンのように見なして冷静にビルド・アップしたリサの態度は、死体をジグソー・パズルみたいに扱う本格ミステリのクールさに釣り合っている、ともいえるけれど。


この『龍臥亭幻想』が刊行された今回から、光文社カッパ・ノベルスのデザインがリニューアルされた。カッパ・ブックス&カッパ・ノベルスといえば、新書サイズで一時代を築いたわけで、70年代の角川文庫ブーム以前は、出版界で最も目立つレーベルだった。そのカッパ・ノベルスが、ライトノベル的なヴィジュアル化で今目立っている講談社ノベルスとは反対の方向で、白ベースの落ち着いたデザインを選択した(派手さは、カバー風の幅広い帯で演出する仕掛け)。この感じ、僕はわりと好き。
そういえば、講談社現代新書も黄色ベースから白ベースにリニューアルしたのだった。講談社と光文社は道路を挟んだ立地で地理的に近いけれど、べつに示し合わせたわけじゃないですよね(笑)。

  • 昨夜の献立
    • 切干大根
    • じゃがいも、ニンジン、たまねぎ+欧風だしのスープ(残り物はルーと豚肉を足してカレーに化ける予定)
    • テンメン醤、豆板醤、白味噌、日本酒、おろしショウガで漬けた豚肉とニンニクの芽をサラダ油で炒める
    • チンしたもやしにポン酢
    • 五穀米1:白米1のごはん