ENDING ENDLESS 雑記帖

文芸・音楽系文筆業=円堂都司昭のブログ

北山猛邦/辻村深月/米澤穂信/笠井潔「現代本格の行方」

笠井潔のミステリ評論「ミネルヴァの梟は黄昏に飛びたつか?」の連載90回突破記念として、「ミステリマガジン」2月号ISBN:B000CS44DE談会が掲載されている(「現代本格の行方――二十世紀を担う新進作家たちの世界」)。
そこで話が、叙述トリック否定派の北山、肯定派の辻村といった流れになり、笠井がこう受けている。

叙述トリックの評価をめぐる北山さんと辻村さんの食い違いは面白いですね。第三の波の中心作家にも同じような対立があり、世代を超えて同じ構図が再生産されているようです。叙述トリック派の綾辻行人にたいして、有栖川有栖二階堂黎人はこのトリックを認めない、少なくとも自作では使おうとしないわけですから。

記載によると、座談会自体は10月7日の収録である。なのに今読むと、(座談会のなかに東野圭吾『容疑者Xの献身』ISBN:4163238603るわけではないけれど)12月初旬に二階堂黎人が起こした例の議論を連想したりもする。
(関連雑記http://d.hatena.ne.jp/ending/20051015


一方、笠井たちの座談会では、“キャラとキャラクター”も話題になっている。
偶然、「ユリイカ」1月号ISBN:4791701429「マンガ批評の最前線」という特集を組んでおり、こちらでも下記の2つの座談会が“キャラ/キャラクター”を主要なテーマに取り上げている。
夏目房之介宮本大人伊藤剛「キャラの近代、マンガの起源」
夏目房之介東浩紀伊藤剛「『キャラ/キャラクター』概念の可能性」
(笠井は「ミネルヴァ」連載でたびたび東浩紀に言及している。最近「ミネルヴァ」31〜60回が『探偵小説と二〇世紀精神』ISBN:4488015190)として刊行)
ユリイカ」のこの特集は、伊藤剛が『テヅカ・イズ・デッド ひらかれたマンガ表現論へ』ISBN:4757141297刊行したことを一つのきっかけに企画されたらしい。
ちなみに、「手塚治虫ファンクラブ」の会長を務めたことのある二階堂黎人は、今年、手塚マンガの古書をめぐって殺人事件が起きる『稀覯人の不思議』を刊行していた。
稀覯人の不思議 (カッパノベルス)
古書価値の高まりに象徴される“手塚治虫”の古典化・神格化と、マンガ批評を更新するための『テヅカ・イズ・デッド』なるスローガン。好対照というか裏腹というか……。