ENDING ENDLESS 雑記帖

文芸・音楽系文筆業=円堂都司昭のブログ

二階堂黎人 黒田研二『永遠の館の殺人』

永遠の館の殺人 (カッパノベルス)
二階堂黎人黒田研二の共作シリーズ第三弾にして完結編。二階堂自身がカヴァーの著者のことばで語っている通り、「館もの+サイコ・キラーもの」の内容である。このシリーズは、二人の作家がわいわい語り合ってネタを打ち合わせる場面が思い浮かぶような、遊戯性が魅力になっている。ただ、この完結編に関しては、結果的に遊戯性が裏目に出たような。
ここには連続殺人者に関して、意外で面白い心理が設定されている。けれど、残念なことに○シリーズの某作、×シリーズの新作と設定がニアミスしている。○某作の場合は丹念な薀蓄で、×新作のほうは幻想的な舞台に関する濃密な書き込みで、いずれも重厚な仕上がりになっている。こうなると、はじめからB級サスペンス的なノリを採用した本書は分が悪い。しかも、バタバタと人が死んでB級サスペンスのノリが頂点に達したところで、真相が明かされる。だからニアミス二作を連想すると、どうしても軽さが目立ってしまう。面白い設定なんだけどなぁ。
作品数が多いせいで、国内本格ミステリ界では毎年、ネタのバッティングやニアミスが生じている。そして重なった複数作品のうち、どれが一番映えてみえるかは偶然の状況次第なわけで、こういうノリで書いておけば一番よくみえるだろうなんてことは、あらかじめわかるわけがない。難しい世界である。
ちなみに僕はこの共作シリーズでは、クイーン兄弟名義だった第一作『Killer X』が一番好きかな。
ところで、『永遠の館の殺人』のISBNの最後が「X」で終っているのは、これがキラーXシリーズだから? それともただの偶然? ちょっと気になります。