ENDING ENDLESS 雑記帖

文芸・音楽系文筆業=円堂都司昭のブログ

「ピンク・フロイド・バレエ」

昨日深夜、NHK BS2で、牧阿佐美バレエ団が2月8日にNHKホールで上演した「ピンク・フロイド・バレエ」が放映された。フロイドの音楽を全編に用いたローラン・プティ演出、振付によるバレエだ。とても興味はあったけれど、チケット代が高いので見送った舞台である。だから、テレビ放映はありがたかった。
一部にスクリーンやレーザーは使われていたものの、基本的には舞台装置なしで白いタイツの男女が踊るだけのシンプルな内容。とりたててストーリー性や絞り込んだテーマは感じられず、生命力、エロス、疎外感といった漠然としたイメージが綴られていく。使われた曲は次の通り。
RUN LIKE HELL / MONEY / IS THERE ANYBODY OUT THERE? / NOBODY HOME / HEY YOU / ONE OF THESE DAYS / CAREFUL WITH THAT AXE,EUGENE / WHEN YOU’RE IN / OBSCURED BY CLOUDS / THE GREAT GIG IN THE SKY / ECHOES(前半) / RUN LIKE HELL(ライヴ) / ECHOES(後半)
代表曲から素直にピックアップするのではなく、あの目立たないサントラ《雲の影》からも選曲。プティなりのこだわりが、感じられる配列だ。でも、ハード・ロック系ナンバーを比較的多く選んでいたのは、ちょっと疑問。ロックを使ったバレエといえば、以前に、モーリス・ベジャール振付、演出でクイーンを多く用いた《バレエ・フォー・ライフ》があった。しかし、プティとは逆に、ベジャールハード・ロック系ナンバーをあまり使わずに構成していた。今回の「ピンク・フロイド・バレエ」をTV観劇して、バレエ家としてのハード・ロックに対する態度はベジャールのほうが正しいと、再認識した。
最初から最後まで、ドラムがドンタンドンタン、あるいはベースがベンボンベンボン、一定のリズムでしかも音圧高く鳴るタイプのハード・ロックは、どうしてもステップの振付が単調になりがちである。BGMのリズムをなぞるだけのステップに陥ってしまうというか。そうするとバレエよりも、ポップス系のダンスやチアリーディングに近いものになっていく。一定のビートでひたすら踊る本人がトランス状態にはまって気持ちよくなるのは、クラブみたいな場所でならいい。でも、バレエは踊る本人の快感ではなく、客席に届ける視覚芸術として存在するのだから、ステップが単調になってはまずい。「ピンク・フロイド・バレエ」では、アンコールでもう一度〈吹けよ風、呼べよ嵐〉を踊っていた。あれが、プティの自信作なのだろう。でも、隊列を次々に変えていきながらも、ステップは素直にBGMのリズムを踏襲している群舞は、僕にはバレエよりもマスゲームを思わせた。また、ステップが単調であるため、よけいに各人の動きの揃いきれなさが目に付く弊害もある。
だから、わりと静かな曲が流れるパートのほうがよかった。外国人客演ダンサーが《ザ・ウォール》の小品でソロやデュエットを次々に演じたパートなどは、振付が伸縮自在な自由な印象で、安心してみていられた。また、〈虚空のスキャット〉のデュエットを踊った草刈民代が美しかった。そして、全編うねうねとした曲調が続く大作〈エコーズ〉が、この公演のハイライト。〈エコーズ〉中盤には、リズム一定ロックの典型〈ラン・ライク・ヘル〉のライヴ・ヴァージョンが挿入されたが、ここは悪くなかったのである。この場面の出演者はわりと少人数で、彼らには単純にBGMのビートをなぞるのではない、もっと複雑なステップが与えられていた。つまり、BGMとダンスでポリリズムが奏でられる図式。これが、バレエ振付のあるべき形なのだと思う。しかし、単調なビートのうえで大集団を動かそうとすると、なかなかステップを複雑にできずBGMに引きずられる。そういうことなのだろう。
昔、《A COLLECTION OF GREAT DANCE SONGS(時空の舞踏)》と題されたフロイドのベスト盤があった。社交ダンスを踊るカップルが紐でつながれて動けなくなっているジャケット・デザインだった。サイケでプログレで、多くの曲においてビートよりも音色のうねりが重視されるフロイド・サウンドは、ダンスには適さない。それを踏まえての冗談&皮肉なタイトル&ジャケットだったわけ。しかし、いくら踊れそうにない曲だって創意さえあればステップは生み出せる。ハード・ロック部分はともかく、プティによる〈エコーズ〉の一連のパートには、確かにその創意が感じられた。
時空の舞踏

  • 18日夕の献立
    • 市販の京風だしで、大根、ごぼう、にんじん、干ししいたけ、鳥むね肉を煮る。――普通の煮物である。
    • 上記のうち半分を別のなべに移し、ニラ、長ネギ、まいたけ、もやしを追加したうえ、豆板醤とナンプラーを加えて味を変化させる。――うまい。しかし、韓国風鍋のイメージで作ったのに、ラーメンを思わせる味になったのはなぜだろう。
    • おろしニンニク&ショウガ、梅肉、刻んだ鷹の爪、ナンプラー、酒にしばらく漬けたいわしをグリルで焼く。
    • 麦入りごはん
    • チンしたもやしにポン酢
  • 19日夕の献立
    • 前日の残りもの
    • おろしニンニク&ショウガ、梅肉、刻んだ鷹の爪、ナンプラー、酒にしばらく漬けたいわしをグリルで焼く。
    • つるむらさきのおひたし
  • 20日夕の献立
    • 揚げびたし――京風だし+シークワーサー+きび砂糖のタレに刻んだ鷹の爪と薄くスライスした玉ねぎをひたす。小麦粉をはたいた鳥むね肉、ゴーヤー、ナスをサラダ油で揚げ、先のタレにひたす。
    • 冷やし汁――おろしショウガを流し入れた冷たい味噌汁に、スライスしたキュウリとワカメを浮かべたもの。
    • ポテチとレタスサラダ。あとは発泡酒とチューハイを呑むのみなり。