ENDING ENDLESS 雑記帖

文芸・音楽系文筆業=円堂都司昭のブログ

クイーン+ポール・ロジャース《リターン・オブ・ザ・チャンピオンズ》

リターン・オブ・ザ・チャンピオンズ(初回限定盤)
来日前にリリースされたライヴ盤を聞く。クイーンはメンバー4人全員が曲を書いたわけだけれど、フレディ・マーキュリー作のナンバーを減らした分、ポール・ロジャースの持ち歌を入れている。つまり、ピアノの目立つ曲が減ったかわりに、ハード・ロックが増えた。
クイーンはハード・ロックで出発したが、その後は間口の広いポップ・ミュージックをやるようになっていった。しかし、フレディの死後、ブライアン・メイは自らの選曲による企画盤《クイーン・ロックス》ASIN:B000026WW3ハード・ロック・バンドとしてのクイーン像をファンに再認識させようとした。ブライアンが自分のソロ・ツアーのメンバーにコージー・パウエルやニール・マレイ(元ホワイトスネイク)を起用したのも、ハード・ロック志向に基づくものだったろう。今回、元フリー、元バッド・カンパニーのポール・ロジャースと組んだのも、ブライアンのそうした嗜好によるのだと思う。
このライヴ盤でブライアンは、〈ファット・ボトムド・ガールズ〉の直前に一瞬〈ホワイト・マン〉のイントロを弾き、また前半をスローにアレンジし直した〈ハマー・トゥ・フォール〉では〈イッツ・レイト〉風のフレーズ&トーンを使うなど、自分の作曲した他のハード・ロック・ナンバーまで垣間見せている。それだけ彼は演奏を楽しんでるってこと。
また、ポップな〈カインド・オブ・マジック〉(ロジャー・テイラー作)などでは、ポール・ロジャースはブルージーで土臭い自分の個性を抑え目にして、曲に寄り添うように歌っている。もともと上手いヴォーカリストなのは知っていたが、予想したほど違和感がないことに驚く。ハード・ロック・バンドとしてのクイーン像を強めつつ、ポップなナンバーも演奏する――というコンセプトにおいて、ポール・ロジャースは意外と適材だったかもしれない。僕は最初、クイーンとポールの合体に批判的だったけれど、このライヴ盤を聞いて来日公演への期待が高まってきた。我ながら移り気である。


ライヴは、ポール・ロジャースが歌いだすことで始まり、まず最初にフレディ以外の人間が歌うんだとはっきりさせる。これは賢いオープニングかもしれない。それでいて〈ボヘミアン・ラプソディ〉の前半ではフレディの声の録音を使って演奏し、聴衆を感傷的にさせるのだ。
クイーンの音楽を用いてモーリス・ベジャールが制作した『バレエ・フォー・ライフ』を思い出す。このバレエでは、〈ボヘミアン・ラプソディ〉の前半を流した後、例のオペラ・パートには続けず、〈ブレイク・フリー〉で、名ダンサーだった故ジョルジュ・ドンの姿をスクリーンに映したのだった。だから今回の、故フレディを会場に出現させるクイーン+ポール・ロジャースの演出は、ベジャールからの逆輸入という印象を受けた。これくらいこってりした演出のほうが、クイーンとしては“らしい”ね。
(関連雑記http://d.hatena.ne.jp/ending/20050903#p1
(追記:10月26日にはボーナスで〈イマジン〉も収録した《リターン・オブ・ザ・チャンピオンズ》のDVD版も発売予定。ASIN:B000BGIE6A

QUEEM

ちなみに一昨日は、CS用に収録されたクイーンのコピー・バンドのライヴを見物に行った。元オペラのクイームであるASIN:B00005EI91
http://www.artrocknight.net/queem/
全スタジオ盤から選曲する趣向で、〈オウガ・バトル〉や、〈キラー・クイーン〉〜〈懐かしのラヴァー・ボーイ〉のメドレーなども。〈ブレイク・フリー〉でニセ乳房をつけたり、〈ボヘミアン・ラプソディ〉のために銅鑼を用意していたり。単純に楽しかったです。
(関連雑記http://d.hatena.ne.jp/ending/20050903#p1