ENDING ENDLESS 雑記帖

文芸・音楽系文筆業=円堂都司昭のブログ

石持浅海『顔のない敵』

(2006ミステリ回想)

顔のない敵 (カッパ・ノベルス)
対人地雷をめぐる連作ミステリ。
地雷反対運動の宣伝のために、NGOが地雷爆発ごっこのイベントを行うこと。土に戻る生分解性プラスチックを用いて、後腐れのないスマートな地雷を開発すること。被害を受ける側の地元民が、地雷の活用法を発見すること。――などなど、人道面でグロテスクな思考と、ミステリ的な推理遊戯をかけ合わせた内容が、スリリングだった。人類が思い、考えることの業(ごう)とでもいうものが出ているようで。
ただ、そのままの調子で通せばよかったが、『水の迷宮』がそうだったように、結末ではハッピーエンド的に“共同の善意”が強調されてしまう。二律背反的な思考の連続が知的興味を呼んでいたというのに、一色の情緒に塗られて終わる。そこは、不満。


周囲の人のサディスティックな攻撃性を刺激して、自分がいじめられると爆発してしまうロボット『いじめてくん』を主人公にしたマンガを、昔、吉田戦車は書いていた。
地雷ミステリを書いた石持浅海が、爆弾ロボット『いじめてくん』についてどんな感想を持っているか、ちょっと聞いてみたい気がする……。
いじめてくん (ちくま文庫)

ちなみに、地雷反対のテーマ音楽といえばこれ。
ZERO LANDMINE