NHK「みんなのうた」で流れた〈おしりかじり虫〉が話題になっている。なぜ今、こんな曲がウケているのだろう?
格差社会にあえぐ人々は、尻に火がついたり、尻を叩かれたり、誰かの尻ぬぐいを押しつけられたり、なにかと尻が大変なことになっている。また、痴漢冤罪問題がいわれ始めて以後、たとえ偶然や不作為であっても、車内において女性の尻に近づくのは危険な行為であると怯えるサラリーマンが増加している。
このようにシビアな昨今の尻状況を、〈おしりかじり虫〉という笑いによって、たとえ一時的にせよ、忘れたい。庶民のそんな切ない願いが、この曲への注目の背景にあるのではないか――――とかなんとか、識者なら分析するのだろうか。
NHK発の子ども向けの変な歌といえば、教育テレビ「からだであそぼ」で見かけた〈ほねほねワルツ〉もインパクトは強烈だった。
ほね組 from AKB48が歌い踊るこの曲は、人の骨の名称をずらずら並べたてる詞になっている。そして、骨のデザインされたコスチュームを着用した、まだあどけないお嬢ちゃんたちが、「大腿骨」、「恥骨」などと口にするのを聞けば、「その部位の骨に肉がついた状態を想像すると……フフ、グヘヘヘ」などとロリコン男が劣情を催すに違いない。これで、子ども向けの枠を越えた話題曲になるのは間違いない――――という風な、あざとい計算が見えすぎる曲でもあった。プロデュースと詞は、秋元康だし。
その点、〈ほねほねワルツ〉に比べると〈おしりかじり虫〉は、さほど考えすぎていない、狙いすぎていない印象だし、まだ好感が持てるかな。