《ヴェスパタイン》以降のビョークは、パーカッションのアレンジが工夫されているにしても、これ踊るべきなんですか、聴くべきなんですか――と受け手を戸惑わせる類の実験性がある。昨夜の序盤は、そうした面が出ていたと思う。バックのメンバーが煽っても、客がうまく乗り切れない。よく練られた見事なサウンドだなーと、とても感心しているのに、どういう態度でいればいいかわからないという雰囲気。
ずっと夕陽の状態が続いているみたいな、意図的に抑制したライティングも戸惑いに拍車をかけたと思う。あれ、客席に強い白い光でも浴びせりゃ、一気に盛り上がったんじゃない? でも、そういうわかりやすい盛り上げはしない、というのがステージのコンセプトなんだろう。その意味では、聴かせる方向性が強かったかも。
最新作《ヴォルタ》の基軸を成していたエレクトロニックでトライバルなノリを前面に出した終盤、アンコールは、圧巻だった。ステージのあちこちに、アフリカンなテイストのカラフルな旗が飾られている。そして、やはりカラフルな衣裳を着たブラス部隊がビョークを囲み、踊りながら演奏するわけだが、彼らは背中に旗を背負っているのだ。ただの旗ではあるけれど、踊るたびに揺れるこれらが、とってもお祭りムードを感じさせた。もし、ブラス部隊が旗を背負っていなかったら、あそこまでの高揚感はなかったかもしれない。
旗を背負ったブラス部隊は、『ライオン・キング』の舞台で、作り物の首だの杖だのちょっとした小道具を使って動物を演じている役者たちに近い。がっちり緻密にヴィジュアルを作りこむのではなく、ごく簡単なもので、あるイメージ、トーンを鮮明に打ち出している点で。昨夜のビョークのライヴは、まるで動物の代わりにバンドが出演した『ライオン・キング』だった。
それにしてもビョーク。相変わらず声に張りがある。と同時に、エアー・パーカッションの仕草をするだけで、あれだけ客席がワーッとなる人もいないと思う。
昨夜のアンコール最後の曲↓
Declare Independence [12 inch Analog]
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