ENDING ENDLESS 雑記帖

文芸・音楽系文筆業=円堂都司昭のブログ

「街中がテーマパーク宣言」

(「ディズニー/浦安的風土記」その4 2007/02/13「研究会日乗」掲載)
11日の「日乗」から鉄筋つながり、っつうことで。
浦安鉄筋家族 (6) (少年チャンピオン・コミックス)
千葉県浦安市に、「フラワー通り」という場所がある。昔、ビートたけしがやっていた『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』の、人気のない商店街を応援するコーナーで取り上げられ一時的に盛り上がったものの、結局さびれて今に至る地域である。
「フラワー通り」では、明治2年に建築された住宅が浦安市指定有形文化財になっており、一般公開されている。こじんまりしたテーマパークといえようか。
一方、そこからさほど離れていないところに、思いっきり斜めに傾いた木造住宅が建っている。二階建てのわりに屋根が低いその家屋は、昔の日本人は背が低かったんだなぁと実感させるが、恐ろしいことに、現在も人が住んでいる。あそこまで歪んでいると扉の開け閉めが大変だと思うけど、地震大丈夫ですか?
浦安鉄筋家族』(浜岡賢次)という、昭和レトロな家並みの描かれたギャグ漫画がある。民家が傾いている風景は、その漫画に近い。
今、「ちばデスティネーションキャンペーン」という千葉県とJRが組んだ観光キャンペーンが展開されており、浦安でも、「街中がテーマパーク宣言」を合言葉にいろいろやっている。そこで、市外から訪れた観光客が、浦安市指定有形文化財住宅と傾いた民家を見たとする。いったい、どちらのほうにテーマパーク的な満足感を覚えるだろうか? きちんと管理されて説明員もいる指定有形文化財より、今にも倒れそうな民家のほうに『浦安鉄筋家族』を読むような臨場感、醍醐味を覚えるのではなかろうか。――正直な話、僕がそうなのである。


かつて『元気が出るテレビ!!』に取り上げられたことは、街の中心ではなくなった「フラワー通り」の(一過性の)テーマパーク化だった。浦安の埋立地域に東京ディズニーランドが開業してから2年後、1985年の放送であった。
そして、現在の浦安では、またもや、「街中がテーマパーク宣言」なのである……。
(関連雑記http://d.hatena.ne.jp/ending/20070201

“ランド”つながり

 トルコ人青年の抗議がきっかけで、かつての「トルコ風呂」が「ソープランド」に改称されたのは1984年のこと。この名称は、特殊浴場協会が公募で決めたものだけれど、前年には東京ディズニーランドが開園していた。だから、「ソープ“ランド”」というネーミングには、ディズニー“ランド”からの影響(への便乗)が感じられた。このように、風俗とテーマパークには親近性がある。
 というか、「人を囲い込んで夢を見させる」って意味では、日本にも昔から吉原みたいな特別な場所があったわけだし、風俗街はテーマパークそのものでしょ。