ENDING ENDLESS 雑記帖

文芸・音楽系文筆業=円堂都司昭のブログ

渋谷陽一と大塚英志

前記、日本語版〈War & Peace〉の詩の朗唱には、ミスチル桜井、よしもとばなな藤原帰一も加わっていた。いかにも筑紫哲也好みのラインナップである。と同時に、藤原と坂本は雑誌「SIGHT」で非戦をテーマに対談していたし、ばななはロッキング・オンから本を出しているし、桜井は同社雑誌の表紙に当然何回もなっているわけだし、同社社長・渋谷陽一好みのラインナップだったりもする。そして「SIGHT」は荷宮和子が書いていること、しばしば宮台真司が登場してきたこと、編集長の渋谷が吉本隆明ファンであること、いわゆる論断誌以外にリベラルというか戦後民主主義的というか非保守の方向で政治論議する場を設けたことなどから、大塚英志編集「新現実」とクロスする要素が少なからずある。
そこで思い出したのが、この書き込み。
http://d.hatena.ne.jp/marita/20031227
ここで書き手は、ロック(そこでは「サブカル」と呼ばれている)の渋谷と、「オタク」の大塚は接点がみられないが、〔佐藤友哉の作品を読むと、その両者が、同じ面で接着しているような感じを受ける〕と記している。この点は、僕も同感。西尾維新などと並べられる佐藤は、とかくアニメやゲームの影響がいわれるが、作品中ではロックに関する言及も多い(プリ・スクール、ナンバー・ガール、中村一義etc。『エナメルを塗った魂の比重』では、登場人物にスーパー・カーのメンバーをもじった名前をつけている)。上記ブログの書き手は、吉本隆明をベースに渋谷と大塚を相対的にみながらのサブ・カルチャー論も構想しているそうなので、ぜひ読ませてもらいたいと期待してます。
そして、相性が悪そうだからこそ、かえって渋谷と大塚の対談を読んでみたい。セッティングする人は大変そうだけど(笑)。


そういえば、「ファウスト」編集長・太田克史の熱さは、「ロッキング・オン・ジャパン」前編集長・鹿野淳とどこか近い気がしてならない。昔、渋谷陽一は、尊敬する雑誌編集長は「SFマガジン」黎明期の福島正実とか答えていた。考えてみれば福島がそうだったように、太田も一つの新しい小説ジャンル立ち上げ期の編集長である。この段落で名前をあげた編集人4名は、作家やアーティスト以上ってくらい、そのジャンルについて語りまくってしまうファナティックさで共通している。いや、ほんの思いつきの戯言ですけど……。