ENDING ENDLESS 雑記帖

文芸・音楽系文筆業=円堂都司昭のブログ

ポール・ロジャース&クイーン残党

クイーンの残党であるブライアン・メイロジャー・テイラーが、元フリー/元バッド・カンパニーのポール・ロジャースと「クイーン」を名乗ってツアーするのだという(ジョン・ディーコンの動静は不明)。このニュースに、クイーン・ファンもフリー・ファンも好意的な反応を示していない。当たり前だ。どうにもピンと来ない組み合わせなのである。ポール・ロジャースは確かに上手い。でも、「クイーン」には違和感がありすぎる。
メンバーの誰かが脱退したり死亡したりした場合、残されたメンバーが新たな血を入れてバンドを存続、復活させようとすることはよくある。昔からのファンにとっての違和感は否めないが、ライヴでまた“自分たちの”曲を演奏したいというバンド側の気持ちはわからなくはない。その際、バンドのことをよく理解してくれる後続世代から人選するのが一般的だろう。例えば、ドアーズ残党がザ・カルトのイアン・アストベリーを招いたみたいに。若手を入れることで、バンドに新たなフィーリングをプラスできるかもしれないという多少は前向きな思いが、そこにはある(まぁ、本人たちの勘違いに終ることが多いが)。
ところが、フリーといったらクイーンの先行世代である。時代を逆回ししてどうする? クイーンの登場が面白かったのは、彼らがそれ以前のハード・ロックとは違ってブルース臭の薄い独特なサウンドを奏でたことだろう。ディープ・パープル系のハード・ロック(あるいはイエスEL&Pなどのプログレ)とも異なるクラシック風味を、クイーンは鳴らしてくれた。なのに、ポール・ロジャースみたいなブルース臭を売り者にする大御所を今さら雇って「クイーン」を名乗るだなんて、全然前向きの発想とは思えない。
ブライアン・メイが一人のハード・ロック・ギタリストとしてルーツ・ミュージックを見直すため、ロジャー・テイラーを巻き込む形でポール・ロジャースと組む――というならまだいい。“スマイル・カンパニー”とか名乗って楽しくやればいいんである。ロジャースが昔、いろいろなギタリストを招いてブルースの巨人マディ・ウォーターズをカヴァーしまくったアルバム《マディ・ウォーター・ブルーズ》を作った時、ブライアンは〈アイム・レディ〉を弾いていた(同じ曲をエアロスミスは《ホンキン・オン・ボーボゥ》ASIN:B0001FR8H2ブライアン・メイジョー・ペリーを聞き比べるのも一興)。そういうヴァケーション感覚で、プロジェクトを組むならいい。
ポール・ロジャースといえば、ジミー・ペイジと一緒にザ・ファームを結成した過去もあるわけだ。フリーやバッド・カンパニーレッド・ツェッペリンの影を求める客に対し、新ラインナップのバンドとしてのイメージをなかなか打ち出せない辛さを、ロジャースは当時経験したはずだ。また、中心人物である自分が不在だった時期のバッド・カンパニーの味気なさだって知っているだろうに。そんな風に多くのことを経験してきたのに、「クイーン」との合体を決めたロジャースの神経が理解できない。
イアン・ギランのやめたあとのディープ・パープルが次のヴォーカリストに考えたのはポール・ロジャースだったが断られて、代わりに昔はロジャースのイミテーション的な歌い手だったデヴィッド・カヴァデイルが加入して、けれどパープルが解散してカヴァデイルが結成したホワイトスネイクの初期のベーシストがニール・マレイで、後にマレイをツアー・バンドに入れたのがフレディ死後にソロ活動を本格化したブライアン・メイだった――と長文で書いた時のロジャースとメイの名前の間のあき方こそが、僕がこの2人に感じる音楽性の距離なのでもあった(ちなみに僕は、ポール・ロジャースの土臭さよりも、デヴィカヴァの艶っぽさのほうを何十倍も愛する人間である)(ついでにいうと、バッド・カンパニーにいたミック・ラルフスは元モット・ザ・フープルで、ラルフス脱退直後のモットの前座をやっていたのがクイーンだったという関連もある)。
しかし、さんざん批判しつつも、もしポール・ロジャース入り「クイーン」の来日が決定すれば、即座にチケットを入手するだろう自分も予想できる。好きなのである、クイーンが。ファン心理は、どうにも複雑である。ならば、ポール・ロジャース&クイーン残党のライヴに自分はなにを望むのか。どの程度なら許せるのか。勝手にツアーの選曲を決めてみた(ジョン・ディーコン不参加を前提にした。「〜」はメドレーの意味)。


ONE VISION / WE WILL ROCK YOU(fast) / SAVE ME / SEVEN SEAS OF RHYE(インスト)〜KEEP YOURSELF ALIVE / I WANT IT ALL / A KIND OF MAGIC(Vo.ロジャー) / NO-ONE BUT YOU(Vo.ブライアン&ロジャー) / NOW I’M HERE〜HEADLONG〜GUITAR SOLO〜BOHEMIAN RHAPSODYハード・ロック部分からの後半) / ‘39 / LOVE OF MY LIFE / LAS PALABRAS DE AMOR (日本のみTEO TORRIATTE) / TOO MUCH LOVE WILL KILL YOU(Vo.ブライアン) / HEAVEN FOR EVERYONE(Vo.ロジャー) / FAT BOTTOMED GIRLS / HAMMER TO FALL / CRAZY LITTLE THING CALLED LOVE / RADIO GA GA / TIE YOUR MOTHER DOWN
(アンコール1)
ALL RIGHT NOW(フリーのカヴァー) / LET ME LIVE(Vo.ブライアン、ロジャー、ポール)
(アンコール2)
WE WILL ROCK YOU / WE ARE THE CHAMPIONS / GOD SAVE THE QUEEN


選曲のポイントは、ラインナップの違和感を薄めるためにフレディ作曲のナンバーを極力歌わせないこと。でありつつ、できるだけクイーンを見た気になれる並びであること。うーむ。とても困難な条件だ……。
12月23日追記:念のためにいうと、クイーンにまったくブルース系の曲がないわけではない。ただ、その手のものは〈シー・ホワット・ア・フール・アイヴ・ビーン〉や〈スティーリン〉みたいなアルバム未収録、あるいはフレディではなくブライアンが歌った〈うつろな人生〉(これはポール・ロジャースが歌うとグッとよくなりそうだ!)など、傍流にとどまっている。だから、今回の人選に首を傾げてしまうのだ。
(関連雑記http://d.hatena.ne.jp/ending/20041113

マディ・ウォーター・ブルーズ

マディ・ウォーター・ブルーズ

(追記:以下が、3月19日南アフリカ公演での選曲だそうです
Tie Your Mother Down / Can't Get Enough Of Your Love / I Want To Break Free / Fat Bottomed Girls / Say It's Not True / Too Much Love Will Kill You (feat. Katie Melua) / Hammer To Fall / A Kind Of Magic / Feel Like Making Love / Radio Ga Ga / Crazy Little Thing Called Love / The Show Must Go On / All Right Now / We Will Rock You / We Are The Champions (feat.African Childrens Choir)
……微妙に考え抜かれた選曲って気はしますが……。)



  • 今夜の献立
    • なにやら赤い鯛のひらき(もらいもの。美味。こげたパリパリの皮は、えびせんみたいな香ばしさであった)、アジのひらき
    • もやしの味噌汁
    • ひらたけとほうれん草のおひたし(ごま油+ポン酢。キノコは親戚が手づみしたものをいただいた。泥を落とすのが大変だったが、香り、食感はばつぐん)
    • 小なすの漬物
    • 玄米1:白米1のごはん