ほとんどがかつての反戦ソングのカヴァーで占められた新作。メイナード・キーナンはTOOLのハードさ、楽器間のせめぎあいに対し、ア・パーフェクト・サークルでは繊細な音色の絡み合いを前面に出して差別化している。
話題は、ジョン・レノン〈イマジン〉の真っ暗なカヴァー。音色の配置もコード進行もメロディも変えられたのに、「想像してごらん」という“愛と平和”のお題目だけは30年以上前と変わっていない今度のヴァージョンは、まるで〈イマジン〉という曲の亡霊。過去、なにか紛争が起きるたびに何度も何度も何度も何度もいろんな人に取り上げられてきたこの曲は、現実的な力を発揮できぬまま、死に切れず、未だに現世を漂っている。その成仏できない曲の抱えた恨めしさを音にしたみたいな、陰鬱なアレンジが強烈。
他のマーヴィン・ゲイ〈ホワッツ・ゴーイング・オン〉、レッド・ツェッペリンもカヴァーした〈ホエン・ザ・レヴィー・ブレイクス〉なども、みな原型から離れた暗いトーンに作り変えられている。善意にあふれるがゆえにある種多幸感を示してしまうありがちな反戦曲より、戦争ノイローゼを音にしたみたいなこのアルバムのアレンジのほうが、今の出口のない苛立たしさにふさわしい。
