ENDING ENDLESS 雑記帖

文芸・音楽系文筆業=円堂都司昭のブログ

『トリニティ・ブラッド』でBUCK-TICK

ドレス(bloody trinity mix)
吉田直の『トリニティ・ブラッドISBN:4044184038アニメ化され、オープニング・テーマがBUCK-TICKだと知った時、なんか納得してしまった。自分は昔、考えるところあってBUCK-TICKを題材にしたやおいマンガ同人誌を集めてみたことがあった。すると“今井寿×櫻井敦司”パターンが多かったのだが、そこで目指されていた絵柄の平均値は、“ゴス”を日本流に曲解・受容したいわゆる“耽美的”なものに、サイバー・パンク風を加味した感じだった。
今から振り返ると、あれらの同人作家たちが技量を身につけ、あの路線の絵柄をまともに完成させたならば、あるいは『トリニティ・ブラッド』のTHORES柴本のイラストみたいになったかもなぁ――と思うのだった。


今回、アニメのテーマ・ソングになったのは、93年作〈ドレス〉のリミックス・ヴァージョン。B-Tのメインのソング・ライターといえば“変な音”を出すことに走りがちな今井だけれど、一方、星野英彦はメロディが素直に美しい曲を書く。〈ドレス〉は、そんな星野の〈JUPITER〉に次ぐ代表作だろう。
すでによく聞いた旧作のリミックスでしかないので、最初はこのニュー・シングルに興味はなかった。しかし、《darker than darkness》ASIN:B00006HBOE音源が4曲収録と知って、久しぶりにB-Tを買うことにした。あの時期のB-Tには、けっこうハマったのである。
曲調に幅が出始めた《狂った太陽》(〈JUPITER〉収録)を経て、既存曲を好きなようにリメイクした変則ベスト《殺シノ調ベ》ASIN:B00006HBOD、インダストリアル系のノイズ趣味に象徴される、今井の実験クン体質が野放図に解放された。そうしてアレンジが多様化し、バンドの体力が向上したうえで生み出された傑作が《darker than darkness》だった。
昭和歌謡的な甘いメロディ、ヤンキー的な暴力性、ゴス/耽美な歌世界といった独特な日本ローカルのポップ体質と、レゲエ、テクノ、ジャズなどの要素を吸収する際の洋楽マニア的な感覚が、絶妙にブレンドされていた。
グランジ風の荒れたサウンドが前面化してポップさを振り切った次作《Six/NiNe》ASIN:B00006HBOF今井寿がソフト・バレエの藤井麻輝、PIGのレイモンド・ワッツと組んで洋風でも和風でもないインダストリアル・メタルを鳴らしたSCHAFT《SWITCHBLADE》ASIN:B0000073M2たものだ。


ところで、昔、大槻ケンヂがなにかのイベントでB-Tをカヴァーした時、「“悪の草”。あ、まちがえた、〈悪の華〉!」と言って演奏が始まったのには笑ったな。今井は「B-T」、大槻は“ひび割れ”という点で、2人は“顔に落書き”が共通していたのだった。