ENDING ENDLESS 雑記帖

文芸・音楽系文筆業=円堂都司昭のブログ

「ディズニー・アート展」

昨日、東京都現代美術館にて「ディズニー・アート展」をみる。
http://www.disney.co.jp/disneyart/index2.html
飾られた絵のなかに、「コンセプト・アート」と肩書きのついたものが少なからずある。しかし、べつに前衛的でも実験的でもない、普通の絵じゃん?――と不思議に思う。
ふと、説明文に気づく。「コンセプト・アート」とは、映画のスタイルやイメージを決めるため事前に描かれるイメージ画のことを指すのだという。そうだったのか。
場所が現代美術館だっただけに、「コンセプチュアル・アート」と勘違いしたよ。紛らわしいなぁ。


普通の美術展の場合、額に入れられた絵が主役だ。会場のモニターでヴィデオが流されていても、それは補足的な説明にすぎない。コンセプト・アートや背景画など、オリジナル画を主体にした今回の展示も、基本的にそうした図式は変わらない。
でも、よく考えてみると、動いてこそのアニメーションだ。アニメからすると、飾られ、止まっている絵は、制作途中で踏み台になった試作品、あるいは作品を組み立てるうえでの部材にすぎない。本当は、ヴィデオで紹介されていたアニメのほうが本来のディズニー“作品”であり、会場の壁に飾られたものは、映像に対する補足的な説明にあたるだろう。
だから、通常の美術展とは逆の、倒錯した図式になっている。――そう考えると、微妙に現代美術っぽいかも。


とにかく、『眠れる森の美女』の背景に描かれた木の肌の質感、細かさ、臨場感に驚かされた。
眠れる森の美女 (新ディズニー名作コレクション(雑誌))
また、サルバドール・ダリとディズニーのコラボ「デスティーノ」は面白かった。グンニャリした時計に代表される例のダリ的風景を短編アニメにしたものだが、動きはいかにもディズニー的で、シュールな『ファンタジア』という印象。
ヒロインに関して、ダリがモデルにし続けた愛妻ガラと白雪姫を混ぜたようなデザインになっているのも、微笑ましい。

ホンマタカシ「東京郊外」

「ディズニー・アート展」のあと、常設展を覗いた。ホンマタカシの「東京郊外 TOKYO SUBURBIA」と題した写真連作は、千葉の風景ばかり並べている。そのなかに、新浦安のマンションを上から写した作品があった。90年代半ばの浦安マリナーイーストを撮ったもので、高い建物の周囲には、まだなにもない原っぱが広がっている。
マンションの孤立感、風景全体の荒涼感に、ちょっとゾッとした。
(とはいえ、現在はその周囲も開発されて街らしくなり、出生数の多い地域になっている。マリナーゼの棲息地である)
(関連雑記http://d.hatena.ne.jp/ending/20051126#p1