折原一の『黙の部屋』は、70年代に活動した謎の画家・石田黙の伝記的小説であり、ちょっとした作品集でもあるという性格を持っていた。この本に掲載された図版に接してから、一度、石田黙の実物の絵を見てみたいと思っていたのだ。
そして今、彼の絵のコレクターでもある折原の熱意により、石田黙展「黙の部屋」が開かれている。
6月25−30日(11:00〜18:30)
文藝春秋画廊(東京都銀座)
(詳細や開催までの経緯などは、折原一公式ホームページへhttp://homepage3.nifty.com/orihara1/)
一昨日、僕も行ってきた。
石田黙の作品は、そこにとらえられた風景、物のバランスや色合いがシュールだということもあるけれど、それ以上に、人の肌や石の表面などに頻繁に描きこまれた渦巻き模様が超現実感を与える。人やモノに取り憑いたような渦巻きは、その部分から現実が揺れ出しているみたいな、不安感をにじませる。いや、それとも渦巻きは、揺れている幻想が異世界で結晶化しようとしている過程を表しているのか……。この、ある種、肉感的で魅惑的でもある渦巻きの肌合いは、印刷では感じにくかったものだ。見に行ってよかった。