(小説系雑誌つまみ食い 36――「メフィスト」9月号/「小説すばる」9月号)
- 出版社/メーカー: 講談社
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「メフィスト」9月号に、渡邉大輔が「メフィスト系の考古学――高里椎奈論」という評論を寄せている。そこでは(円堂都司昭「シングル・ルームとテーマパーク」[『謎の解像度』所収]などに触れつつ)次のように書かれている。
このように、八〇年代以降の新本格ミステリの傑作群はいわば「場所性」=「空間性」のキャラ立ちによって成立していた。
そう考えれば、ゼロ年代のミステリをはじめとする現代の小説空間とは、言うまでもなくそうした「場所性」の喪失にあったと見ることができよう。
渡邉はこう述べて「ファスト風土化」(三浦展)、「ジャスコ化」(東浩紀)に伴う、かつてのような都市論の失効を指摘する。
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一方、「小説すばる」9月号はミステリー特集であり、そのなかに「日本全国、ご当地ミステリー小説紹介」という特別企画がある。これは、小池啓介、川出正樹、福井健太などがそれぞれの地域にまつわる作品をいろいろ紹介したもの。つまり、“「場所性」=「空間性」のキャラ立ち”こそがテーマとなった企画である。そして、東京繁華街、北日本・東日本、関西地方、西日本など5ブロックに分けて5人の筆者がブックガイドを行っているのだが、杉江松恋の担当した関東地方のページのタイトルがなんとも象徴的。
「プチ東京化の進行する首都圏のミステリー」
杉江はここで、「都市と郊外」、「ドーナツ化現象」、「無計画な開発」、「旧い町並みと新しい建築物がモザイクのように入り混じる、無秩序な場所」についてまず語ったうえで、宮部みゆき『理由』から紹介し始める。「ご当地」という“キャラ立ち”がテーマの企画であるのに、その“キャラ立ち”が失効していく風景から書き出すという皮肉な展開を見せているのだ。
期せずして、渡邉の評論が理論編、杉江のガイドが実例編の関係になっているように見えるのが、自分には面白かった。
- 作者: ジョシュアメイロウィッツ,Joshua Meyrowitz,安川一,上谷香陽,高山啓子
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