ENDING ENDLESS 雑記帖

文芸・音楽系文筆業=円堂都司昭のブログ

島田荘司『エデンの命題』

エデンの命題 The Proposition of Eden (カッパノベルス)
中編2作。そのうち表題作は書き下ろしだが、同時収録の「へルター・スケルター」(初出は『21世紀本格』ISBN:4334074499)と方向性は同じ。いずれも、脳医学や生物科学をめぐる薀蓄の面白さが、ミステリとしての仕掛けの妙味を上回っている印象である。
とはいえ、「エデンの命題」の神学的テーマにひっかけたオチ、「へルター・スケルター」の同名曲ASIN:B00005GL0Sの持ち込みかたなどには、島田荘司らしい“技”が効いている。そのへんはやはり“娯楽小説”であって、同様の情報を科学啓蒙書で知らされてもこうは楽しめない。
子どもたちが集められた特殊な施設に、宗教的な楽園イメージを重ね合わせる――「エデンの命題」のそんな基本的な発想や図式は、西澤保彦『神のロジック 人間のマジック』ISBN:4163218408るものがある。読み比べてみるのも一興でしょう。
(関連雑記http://d.hatena.ne.jp/ending/20041026