ENDING ENDLESS 雑記帖

文芸・音楽系文筆業=円堂都司昭のブログ

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批評のゼロ年代と「幻影城」の七〇年代

YC M

「近代文学の終り」のゼロ年代/七〇年代 妙に既視感を伴う風景だった。ここでは新しさが競われているにもかかわらず、彼らは、ある意味で新しさを禁じられた状態にいた。かといって、たとえ過去によく似た風景があったとしても、今の彼らはもう過去と同じで…

先行者としての中島梓/栗本薫

M YC

asahi.Com http://www.asahi.com/obituaries/update/0527/TKY200905270111.html 訃報を知り、驚いている。 第9回本格ミステリ大賞の受賞者記者会見で、私は話した。江戸川乱歩のような過去の作品は子どもの頃から読んでいたが、同時代に生み出されたミステ…

「友愛」と「エロスジェネ」

YC

結局、某党の代表選は「友愛」の人が勝利した。 一方、「ロスジェネ」の次号は、「総特集 それでも生きたい、愛したいッ!! エロスジェネ宣言」だそうな。 http://losgene.org/ ということは、もし、某党新代表が総選挙後に次の総理大臣になったりすると、ロ…

「団塊の世代」と「友愛」

「団塊の世代」の某政治家が「友愛」とかいっているが、彼は次のセリフをどう思うだろう? 元ザ・フォーク・クルセダーズで精神科医のきたやまおさむ(この人も某政治家と同世代)は、「団塊の世代」の老人が増える一方、若者たちに彼らの面倒をみる余裕など…

「本人」、ひろゆき / 平野啓一郎『決壊』

「本人」のリニューアル第1号の巻末には、「編集部一同」名義で「第二期『本人』始動にあたって」と題した所信表明が掲載されていた(同誌のスーパーバイザーは松尾スズキ、編集長は北尾修一)。そこには、こう記されている。 そして、同時に、今回のリニュ…

Perfume/「歌ってみた」

例えば、60年代にビートルズがヒットした時、最初からジョン・レノンとポール・マッカートニーの声が聞き分けられた人は多くなかった、という証言がある。あのバンドはワーワー歌っているだけの騒音にすぎない、いや、そのワーワーこそが楽しいんだ――という…

「コンテンツ・メディア業界の1998年問題」、e-NOVELS

昨夜は、夜のプロトコル・アカデミー:講座01回「コンテンツ・メディア業界の1998年問題」(津田大介×いしたにまさき×速水健朗)を見に行った。 http://www.yorutoko.com/2009/02/post-6c34.html 新聞、雑誌、音楽CD、TVゲームなどの市場のピークが97〜98年…

ゼロアカ道場第五回関門の告知が

http://shop.kodansha.jp/bc/kodansha-box/zeroaka/kanmon_05.html 特別審査員に筒井康隆と村上隆とは……。 筒井の起用は、“評論家の梁山泊”という彼の小説『俗物図鑑』のシチュエーションがゼロアカ道場と近しいためか、それとも落選者は『大いなる助走』の…

動画備忘録

ここ1年くらいのお気に入り。 ・吉幾三×Capsule×Daft Punk×Beastie Boys http://www.nicovideo.jp/watch/sm3101468 ニコニコ動画やYouTubeに上がってる幾三モノって、「俺ら東京さ行ぐだ」と別の曲をただ一緒に鳴らしただけみたいなクオリティの低いものが…

〈ザ・コンストラクション・オブ・ライト〉に関するほんとーにどうでもいい注釈

http://d.hatena.ne.jp/fujita_xamoschi/20081028 キング・クリムゾンが4人編成になって録音した《ザ・コンストラクション・オブ・ライト》(2000年)のタイトル曲〈The ConstruKction Of Light〉は、インストルメンタルの前半とヴォーカルが入る後半で構成…

あまりにも『おそ松くん』なゼロアカ

YC

(追悼・赤塚不二夫) 80年代のニューアカ・ブームの頃、浅田彰などが編集する「GS たのしい知識」という雑誌があった。その第2号(1984年)に、中森明夫が「あまりにも『おそ松くん』な現在思想(ニューアカデミズム)」と題したエッセイを寄せて…

明日は「早稲田文学」10時間連続公開シンポ

(“評論”レヴュー/“レヴュー”評論 5) 19日に行われる「早稲田文学」主催の10時間連続公開シンポジウムを、自分も見物しに行くつもり。 【プログラム】(予定) 10:30-12:15 ポッド1「文芸メディアの現在――批評的メディアはどうありうるか」パネリスト:東…

フレディ波多江《MR.GOOD GUY》(と菊地成孔)

ナップスターの新規配信リストにこれがあったのでズッコケた。クイーンのコピー・バンド「GUEEN」のヴォーカルが以前に出した“オリジナル”ミニ・アルバムだ。 内容は、フレディ・マーキュリーが80年代にソロでやっていたエレ・ポップ調楽曲(〈ラヴ・キ…

ゼロアカ道場

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「講談社BOX」http://shop.kodansha.jp/bc/kodansha-box/zeroaka/kanmon_04.html 「Gチャンネル」http://d.hatena.ne.jp/kidana/ ゼロアカ道場が、にぎやかなことになっている。 講談社BOXから初版1万部でデビューさせる新人批評家1人を選ぶ企画なのだし…

アラン・ブライマン『ディズニー化する社会』

パフォーマティブ労働、感情労働、美的労働 好著『ディズニーランドという聖地』asin:4004301327を書いた能登路雅子が監訳者となったアラン・ブライマン『ディズニー化する社会 文化・消費・労働とグローバリゼーション』を読んだ。 本書は、ジョージ・リッ…

『ケータイ小説的。』/『文学の断層』/浜崎あゆみ

ケータイ小説的。――“再ヤンキー化”時代の少女たち作者: 速水健朗出版社/メーカー: 原書房発売日: 2008/06/09メディア: 単行本購入: 25人 クリック: 781回この商品を含むブログ (213件) を見る いろいろと刺激的な本である。速水健朗は、ケータイ小説で描かれ…

『新・萌えるヘッドホン読本』

http://www.moe-hp.org/ ヘッドホンの各種製品紹介と、ヘッドホン少女のイラスト集を合体させた本。 それらの機器を身につけた少女は、外界の音を遮断することで、周囲から距離をとっているようなところがある。 一方、耳を包むヘッドホン、耳の穴に挿入され…

「ゼロ年代の言論」とネットイナゴ

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(「ローレゾリューション論(仮)」のための覚書 7)(“評論”レヴュー/“レヴュー”評論 4) 「論座」5月号 特集「ゼロ年代の言論」には、ネット的な言葉の流れ&速さ(例えば、短期間で大量の言葉が同期してしまうこと)に批評の言葉をどのように対置する…

続「ミステリ・ジョッキー」。そして「文化系トークラジオLife」――(“DJ的”雑考 4)

(「ローレゾリューション論(仮)」のための覚書 6)(“評論”レヴュー/“レヴュー”評論 3) 『その音楽の〈作者〉とは誰か』『聴衆をつくる』 音楽学者・増田聡の原稿に関する考察から始まった「“DJ的”雑考」が、なぜミステリ界の評論家批判や「ミステリ…

鈴木謙介「同期するメッセージ、空虚への呼びかけ」――(“DJ的”雑考 2)

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(「ローレゾリューション論(仮)」のための覚書 4) 「InterCommunication」64号の音楽/メディア特集で、増田聡はこうも書いている。 DJ的な「作曲の時代」の支援ツールだったはずのものが、キャラクター志向的な想像力へと吸引さ…

増田聡「『作曲の時代』と初音ミク」――(“DJ的”雑考 1)

(「ローレゾリューション論(仮)」のための覚書 3) Inter Communication (インターコミュニケーション) 2008年 04月号 [雑誌]出版社/メーカー: エヌ・ティ・ティ出版発売日: 2008/02/27メディア: 雑誌購入: 1人 クリック: 25回この商品を含むブログ (20件…

きつかわゆきお『ドラマで泣いて、人生充実するのか、おまえ。』

ドラマで泣いて、人生充実するのか、おまえ。作者: きつかわゆきお,村田篤司出版社/メーカー: バジリコ発売日: 2008/03/11メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 30人 クリック: 508回この商品を含むブログ (30件) を見る 自分は、橘川幸夫が(特に1980…

さらに『クリアネス』、辻仁成

(『ピアニシモ』『ピアニシモ・ピアニシモ』の趣向に触れています) 『ピアニシモ』 『クリアネス』の(特に映画版で強調されていた)「レオ−透明人間」という分身関係に近い図式は、辻仁成のデビュー作『ピアニシモ』(90年)にも見出せる。 いじめが待…

再び『クリアネス』、村上龍、Yoshi

http://d.hatena.ne.jp/ending/20080305#p1のつづき 『クリアネス』と酒鬼薔薇聖斗 自らを「透明な存在であるボク」と形容した酒鬼薔薇聖斗(当時14歳)が97年に起こした殺人事件から10年後。2007年に刊行された十和『クリアネス』には「限りなく…

「エクス・ポ」の文字の大きさ

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http://expoexpo.exblog.jp/7362466/ 「濃縮新雑誌」と銘打って創刊された「エクス・ポ」は、本当にみっしり文字が詰め込まれている。確かに、誌面に濃縮感はあるのだが、やはりあまりにも文字が小さすぎやしないか。 「エクス・ポ」の編集発行人である佐々…

香山リカ『ポケットは80年代がいっぱい』

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ポケットは80年代がいっぱい作者: 香山リカ出版社/メーカー: バジリコ発売日: 2008/02/28メディア: 単行本購入: 5人 クリック: 105回この商品を含むブログ (39件) を見る 83年に解散(散開)したYMOが90年代に再結成(再生)した際、〈ポケットが虹で…

さらに、自分探し、『犬神家の一族』、『さよなら妖精』

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市川崑監督『犬神家の一族』 市川崑監督が亡くなったのに伴い、先月、映画『犬神家の一族』がテレビで放映された。 この物語においては、太平洋戦争において自分のミスが原因で部隊を全滅させてしまったという自責の念を持つ者が、大量殺人事件にかかわるこ…

自分探し、逃走、蒸発

速水健朗『自分探しが止まらない』 ミステリには、真相探しと自分探しの相乗効果を狙った作品がある。事件に巻き込まれた記憶喪失の人間がいて、彼が真相を発見すると同時に、本当の自分も知ることになる――というストーリーに典型的であるような。だから、ミ…

米光一成「大人にゃ見えない、ケータイ小説という少女たちの秘密基地」

「週刊ビジスタニュース」最新号に、上記の文章があった。米光の考察には、納得させられるところが多い。 http://www.sbcr.jp/bisista/mail/art.asp?newsid=3301 まず彼は、『Deep Love』、『恋空〜切ナイ恋物語 〜』などのケータイ小説の内容が、60…

映画&小説『クリアネス』

(映画版の趣向に触れています) クリアネス―限りなく透明な恋の物語作者: 十和出版社/メーカー: スターツ出版発売日: 2007/02/01メディア: 単行本 クリック: 2回この商品を含むブログ (15件) を見る 第1回日本ケータイ小説大賞を受賞した十和『クリアネス …