ENDING ENDLESS 雑記帖

文芸・音楽系文筆業=円堂都司昭のブログ

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石上三登志『名探偵たちのユートピア』(と島田荘司)

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「黄金期・探偵小説の役割」と副題のあるこの本は、むしろ、いわゆる“本格ミステリ黄金期”を最上とみなす価値観からズレたところにあえて視点を設定し、古典的作品の読み直しを図る姿勢が面白い。 最初の章では、まずホームズについて考察しており、後の章で…

阿部和重『ミステリアスセッティング』

吟遊詩人が自分の天職だと信じているのに、どうしようもなく音痴な女の子の悲惨な物語。前半は皮肉な青春小説、後半は「スーツケース型核爆弾」(かもしれないモノ)をめぐるサスペンス小説として展開する。 その後半で、主人公のシオリが、東京タワーに行っ…

本格ミステリ大賞候補作

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4日、第7回本格ミステリ大賞の候補作が決定した。 小説部門 『顔のない敵』石持浅海ASIN:4334076394 『シャドウ』道尾秀介ASIN:4488017347 『邪魅の雫』京極夏彦ASIN:4061824384 『樹霊』鳥飼否宇ASIN:4488017274 『時を巡る肖像』柄刀一ASIN:440853501X …

京極夏彦=甲殻類

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(小説系雑誌つまみ食い 13――「WB」Vol.08) フリーペーパー化した「早稲田文学」=「WB」の最新号。連載インタヴュー「作家の背骨――重松清の部屋」のゲストが、京極夏彦である。これが、面白い。 http://www.bungaku.net/wasebun/freepaper/vol08…

『犬神家の一族』をめぐって

リメイク版『犬神家の一族』 しばらく前、舞浜のシネマイクスピアリで、『犬神家の一族』リメイク版を見たのだった。客席はガラガラ。グッズ売り場でも、『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』の骸骨が場所をとっていて、スケキヨは隅っこに追いやられてい…

安井俊夫『犯行現場の作り方』

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ミステリに登場する奇妙な“館”の数々について、一級建築士が作中の記述から具体的な寸法を割り出し、建築図面に起こした本。 “○○館”は建築基準法違反だという、よくある笑い話をめぐり、プロの目から愛のあるツッコミを入れている。綾辻行人『十角館の殺人』…

YUJI OHNO & LUPINTIC FIVE live

昨夜、舞浜のクラブイクスピアリにて、大野雄二のグループのライヴを見た。 親に買ってもらうというのではなく、僕自身のお小遣いで初めて買ったLPレコード。――それが、大野雄二の出世作ともなった、映画『犬神家の一族』(1976年版)のサントラだった…

ポー「大鴉」

(2006ミステリ回想) 偶然だろうが、有栖川有栖『乱鴉の島』ASIN:4104308021『カオスコープ』ASIN:4488012132、いずれもエドガー・アラン・ポー「大鴉」ASIN:4003230620れた。大鴉が「Nevermore」と繰り返すあの詩に、死生観、身体性、記憶な…

田中啓文〈永見緋太郎の事件簿〉

(2006ミステリ回想) 落下する緑 永見緋太郎の事件簿 (創元クライム・クラブ)作者: 田中啓文出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2005/11/29メディア: 単行本 クリック: 4回この商品を含むブログ (45件) を見る サックス奏者・永見緋太郎が探偵役となる…

大倉崇裕『福家警部補の挨拶』

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(2006ミステリ回想) 倒叙ものの良作。 特に、ヘヴィスモーカーが煙草を切らしたらどんな行動をとるか、それを予想したうえで犯行計画を立てる「オッカムの剃刀」には、ゾッとした。僕は数年前に煙草が値上げされた際、もう小づかいが追いつかなくなっ…

芦辺拓『千一夜の館の殺人』

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(2006ミステリ回想) ビルの上部に並んだ無数の白熱電球。その電飾の明滅によるベリーダンサーの影絵芝居に、人が激しく争うシルエットが唐突にかぶさり……という導入部が魅力的だった。 最近の自分の仕事 「《プレゼンス》とロバート・プラント」 → 「…

石持浅海『顔のない敵』

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(2006ミステリ回想) 対人地雷をめぐる連作ミステリ。 地雷反対運動の宣伝のために、NGOが地雷爆発ごっこのイベントを行うこと。土に戻る生分解性プラスチックを用いて、後腐れのないスマートな地雷を開発すること。被害を受ける側の地元民が、地雷の活…

魔界デス都市ノート

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(小説系雑誌つまみ食い 10――「小説NON」12月号) 小説NON (ノン) 2006年 12月号 [雑誌]出版社/メーカー: 祥伝社発売日: 2006/11/22メディア: 雑誌この商品を含むブログ (1件) を見る 10月号から、菊地秀行が『魔界都市ブルース』の新シリーズを連載して…

「金田一さんの音源です!」

レコード・コレクターズ 2006年 12月号 [雑誌]出版社/メーカー: ミュージックマガジン発売日: 2006/11/14メディア: 雑誌この商品を含むブログ (4件) を見る ビートルズ《LOVE》を特集した「レコード・コレクターズ」最新号に、「金田一さんの音源です!…

『黒蜥蜴』上演

殊能将之が、真矢みきに江戸川乱歩の『黒蜥蜴』を演じさせたいと書いているのを見かけた。あの役を今演じられるのは、篠井英介とタカラジェンヌだ――とも。 http://www001.upp.so-net.ne.jp/mercysnow/LinkDiary/index.html (篠井は、橋本治脚色『黒蜥蜴』を…

『白菊』と《SENSUOUS》

藤岡真のこのミステリ小説には、『白菊』という謎の絵が登場する。それが魅力的。最初は折れ釘と球がたくさん散らばっているだけとしか見えない画面に、ある角度から光が当たると、白菊が浮き上がる。一種の騙し絵だ。 一方、コーネリアスの《SENSUOU…

米澤穂信の“青春以前小説”

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(小説系雑誌つまみ食い 9――「活字倶楽部」秋号、「小説すばる」11月号) 「活字倶楽部」ASIN:B000JLSUE8ンタヴューが載っている(「作家登場」)。デビュー前からの歩みをたどる内容で、近作『ボトルネック』ASIN:4103014717、 自分の青春小説の一次決算と…

ディズニー関連の小説

(小説系雑誌つまみ食い 8――「野性時代」11月号) 「東京ディズニーシー5周年記念作品」と銘打って、同誌に狗飼恭子が『Sea of Dreams』という連作の第四話、第五話を寄せている。 http://www.kadokawa.co.jp/sp/200310-02/main.html 当然、第一…

iTunes Storeで『姑獲鳥の夏』

iTunes Storeで発売された京極夏彦『姑獲鳥の夏』のオーディオブックがどんな感じなのか、試聴してみた。『姑獲鳥の夏1』2時間56分のうち、1分30秒は無料で聞ける設定なのだ。しかし…… 妖怪シリーズの場合、本の最初に物の怪の絵が掲げら…

『夜のミッキー・マウス』と『邪魅の雫』

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夜のミッキー・マウス (新潮文庫)作者: 谷川俊太郎出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2006/06/28メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 32回この商品を含むブログ (51件) を見る 昨日、仕事帰りの京葉線で、ちょっと前に文庫化された『夜のミッキー・マウス』を読…

「菊畑」と『犬神家の一族』

ずっと前から気になっていたのに、なぜか見ていなかった演目「菊畑」(『鬼一法眼三略巻』)を、昨日、歌舞伎座の幕見で観た。 横溝正史『犬神家の一族』で、人形の頭部と佐武のそれがすげ替えられ、生首コロリンとなるシーンがあった。あの菊人形は、犬神家…

秋の「食」特集

(小説系雑誌つまみ食い 5――「小説すばる」10月号) 小説すばる 2006年 10月号 [雑誌]出版社/メーカー: 集英社発売日: 2006/09/16メディア: 雑誌この商品を含むブログ (3件) を見る 最新号のメインの特集は“北方水滸”ASIN:4087747824、秋の彩り「食」特集も…

坂東眞砂子が……

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(小説系雑誌つまみ食い 4−−「本が好き!」10月号) http://www.kobunsha.com/CGI/magazine/hyoji.cgi?sw=index&id=026&date=20060909 親に殺意を抱いた瞬間 光文社のPR誌「本が好き!」が、「親に殺意を抱いた瞬間」というテーマで4人にエッセイを書かせ…

乙一『銃とチョコレート』

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〔かつて子どもだったあなたと少年少女のための――〕と銘打たれた〈ミステリーランド〉の一冊として、乙一を読む。考えてみると、これは、ちょっと不思議なことかも。 〔少年少女のための〕本としてライトノベルに視線が集まり始め、「ファウスト」に象徴され…

「新潮」8月号

(小説系雑誌つまみ食い 1) 細野晴臣+中沢新一「これからはじまる音楽のために」 「YMO」を「イモ」と読んだという中沢発言といい、マーティン・デニーやはっぴいえんどへの言及のしかたといい、まるで80年代の対談の再録を読んでいるみたい。「エレ…

探偵小説研究会HP

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探偵小説研究会が、サイトを開設しました。 http://www.geocities.co.jp/tanteishosetu_kenkyukai/index.html 13日夜の献立 焼きチキンかつ(卵抜きのころも。ガーリックオイルで焼く。中濃ソース+マスタード+バルサミコ酢) キャベツのゴマ油炒め(こしょ…

米澤穂信『夏期限定トロピカルパフェ事件』

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本自体は、発売された春に読んでいた。でも近頃、どんどん夏らしくなってきたことだし、書きとめておくにはいいタイミングかな、と。 シリーズ前作は『春期限定いちごタルト事件』だったし、今後、『秋期限定モンブラン事件(仮)』も予定されている(http:/…

今さら「あいのり」

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もう何年もチャンネルをあわせていなかった恋愛観察バラエティ「あいのり」を、昨夜、たまたま目にした。 あれは、ラブワゴンという閉じた状況で男女が海外を旅して、そのなかでカップルが成立したら、2人して日本に帰国できますってのが基本ルールでしょ。…

本格ミステリ大賞

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昨日の公開開票式で、第6回本格ミステリ大賞が決定した。 小説部門−−東野圭吾『容疑者Xの献身』 評論・研究部門−−北村薫『ニッポン硬貨の謎』 最近、自分が書いたもの 本格ミステリ作家クラブ編『本格ミステリ06』(講談社ノベルス)の解説(収録作の選…

鯨統一郎『パラドックス学園』

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『ミステリアス学園』ISBN:4334740472、ミステリのお約束をネタにした素っ頓狂でおバカな小説。トリックには同傾向の先行作があったけれど、鯨のこれはこれで、楽しめる作りに仕上がっている。理屈づけの無理矢理さとか、後から読み返した時の伏線の強引さと…