ENDING ENDLESS 雑記帖

文芸・音楽系文筆業=円堂都司昭のブログ

novel

渡辺淳一語録@浦安

6月1日付のタウン紙「うらやすニュース」のトップ記事は、5月17日に行われた第18回浦安文学賞授賞式だった。渡辺淳一が選考委員を務める賞で、今回は19歳の男性が受賞したが、ほかの佳作・奨励賞6人はいずれも女性だった(25歳、65歳、52歳…

デジタル生活と小説誌

(小説系雑誌つまみ食い 19――「小説新潮」6月号) 「今日から楽しむデジタル生活」という特集が組まれている。そこで、角田光代が「iPod使いこなさず使っています」というエッセイを書いているのだが、僕も使いこなさず使っているくちなので、えらく共感…

コンピュータのキーボードとケータイのボタン

(小説系雑誌つまみ食い 18−−「群像」6月号、「新潮」6月号) 橋本勝也「具体的な指触り」 「群像」6月号に、群像新人文学賞評論部門の優秀作として、橋本勝也「具体的(デジタル)な指触り(キータッチ)」が掲載されている。すでに一部で話題にされてい…

島本理生『大きな熊が来る前に、おやすみ。』

若い女が部屋で男とすごしている――というシチュエーションを中心にした話が、三つならんでいる。動物をある種の象徴として扱っていること、暴力性や悪意をテーマにしていることで、三篇は共通している。 このうち「猫と君のとなり」は、あのハッピー・エンド…

林真理子×佐藤寛子

(小説系雑誌つまみ食い 17 「小説すばる」5月号) 林真理子が今度、グラビア業界を舞台にした連作短編集『グラビアの夜』asin:4087748553をまとめるのだという。その刊行にあわせ、以前、林が取材した佐藤寛子とのスペシャル対談「グラビアを生きる、グラ…

綿矢りさ『夢を与える』

(小説系雑誌つまみ食い 16――「すばる」5月号、小説系とはいえないけど「論座」5月号) 「すばる」5月号に、「『現在』女性文学へのまなざし。」の第一回として、綿矢りさインタヴュー(聞き手:榎本正樹)が掲載されている。ここで綿矢は、初めての「長…

第18回浦安文学賞

本日付けのタウン紙「うらやすニュース」のトップ記事は、「第18回浦安文学賞決まる」。 受賞者は、実川れお(18歳)、男性(だよね? あの写真は)だった。 その受賞作「ほくほく」は、こういう話だという。 女子高生のケーコが、脱サラして焼き芋屋にな…

見城徹『編集者という病い』

編集者という病い作者: 見城徹出版社/メーカー: 太田出版発売日: 2007/02/21メディア: 単行本購入: 8人 クリック: 37回この商品を含むブログ (100件) を見る 70年代後半から小説誌「野性時代」の編集にかかわり、中上健次、村上龍、つかこうへい、三田誠広、…

阿部和重『ミステリアスセッティング』

吟遊詩人が自分の天職だと信じているのに、どうしようもなく音痴な女の子の悲惨な物語。前半は皮肉な青春小説、後半は「スーツケース型核爆弾」(かもしれないモノ)をめぐるサスペンス小説として展開する。 その後半で、主人公のシオリが、東京タワーに行っ…

『はじめての文学 村上龍』『同 村上春樹』

すでに、第2回配本で『よしもとばなな』ASIN:4163598308でいる『はじめての文学』シリーズ。 文藝春秋HPhttp://www.bunshun.co.jp/book/hajimete/index.htm 第1回配本は、『村上龍』と『村上春樹』だった。 『村上春樹』の場合、「かえるくんのいる場所…

「日本文学ふいんき語り」番外編

(小説系雑誌つまみ食い 11――「小説推理」1月号) http://www.futabasha.co.jp/?magazine=suiri 特集「笑える新感覚文藝座談会」と銘打って、『日本文学ふいんき語り』ASIN:4575298611されている。お題は、夏目漱石『坊っちゃん』。これは10月に書店で行…

ディズニー関連の小説

(小説系雑誌つまみ食い 8――「野性時代」11月号) 「東京ディズニーシー5周年記念作品」と銘打って、同誌に狗飼恭子が『Sea of Dreams』という連作の第四話、第五話を寄せている。 http://www.kadokawa.co.jp/sp/200310-02/main.html 当然、第一…

「本当に売れっ子作家になれる文学賞はどれだ?」

(小説系雑誌つまみ食い 7――「ダ・ヴィンチ」11月号) 「本当に売れっ子作家になれる文学賞はどれだ?」と題して、文学賞特集をやっている。 そのなかで、「発表!コレが新人文学賞の“実力”だ」とぶち上げ、アンケートを実施。読者認知度、書店員注目度、前…

「STUDIO VOICE」9月号

昨年の「SUTUDIO VOICE」6月号の「最終コミックリスト200」、今年の「ユリイカ」1月号の「マンガ批評の最前線」、「KINO」VOL.01の「マンガ新世紀宣言!!」ASIN:4309906753、そして上記の「現在進行形コミック・ガイド!」……。ラノベ語り…

「小説すばる」8月号

(小説系雑誌つまみ食い 2) 特集 真夏の夜の悪夢! 平山夢明「チャコの怪談物語」 虐待者である父親に歯向かった娘とその男友だちがボコボコにされて、体中を青や紫にしながら逃げてった果てのお話。題名のベタさに釣り合って、類型的な若者像が典型的な若…

今年の浦安文学賞

今朝とどいたタウン紙「うらやすニュース」のトップ記事は、第17回浦安文学賞授賞式。選考委員の渡辺淳一先生がどんな作品を選ぶのか、たいへん注目されたわけだが、二十代男性の書いた時代小説が受賞したという。他の佳作+奨励賞7人も、男3女4の無難…

阿部和重『プラスティック・ソウル』

以前、商業ベースではない小説を読んでいて印象に残ったことがある。基本的には、30代後半のヒロインを視点人物として物語が進むのだが、彼女は自分の年齢をやたら気にしている。やれ、もうオバさんだから、とか、肌にはりがなくなった、などと心のなかで…

小説誌のネット論議

ファミレスとコンビニとインターネットを潰せばニートは一掃できる。 「文学界」4月号 ISBN:B000EQ4FNS底討議「ネット時代と溶解する資本主義」で、東浩紀がそんな冗談を発していた。ははは。そうかもしんない。 でも、東、鹿島茂、佐藤優、松原隆一郎の4…

『日本文学ふいんき語り』

ゲーム作家たちが、頼まれてもいないのに小説のゲーム化を検討してみせた『ベストセラー本ゲーム化会議』ISBN:4562035560、なかなか愉快な本だった。ゲームにするためには、なにがしかの形式化、法則化を行わなければならず、そんなアングルで見れば自ずと小…

表紙なしジャケなし

ここ最近、雑誌掲載短編のコピーを読んだり、ジャケットのないCD−Rのサンプル盤を聞いたり、音楽関連映像新作をやっぱジャケなしのプロモ用ヴィデオテープで見たりという日々が続いている。でも、なんつーか、商品としてパッケージ化されていない状態でい…

「STUDIO VOICE」3月号

遅くなったが、合間をみつけたので雑記しておく。 しばらく前の「Invitation」誌に、ブックガイドの氾濫を取り上げたコラムが載っていた。『このミステリーがすごい!』を刊行する宝島社などは、『この文庫がすごい!』ISBN:4796647384、『このラ…

絲山秋子、エイドリアン・ブリュー

昨日、芥川賞に、絲山秋子「沖で待つ」が選ばれた。 そういえば、「群像」2005年12月号(特集 ロックと文学)掲載の絲山秋子×ロビン・ヒッチコック対談によると、絲山のデビュー作は、キング・クリムゾン《ディシプリン》収録の〈エレファント・トーク…

「ファウスト」とマイルス・デイヴィス

「ファウスト」vol.6 SIDE−Bを頂戴した。SIDE−A(ISBN:4061795864)とSIDE−Bの二分冊にしなければならなかったこのとんでもない分量のvol.6の特集は、「新伝綺リプライズ!!」。つまりvol.3で「新伝綺」を第二特集していたこ…

フレディの命日、三島の命日

昨日、コンビニに行ったら、クイーンの〈サンク・ゴッド・イッツ・クリスマス〉が聞こえてきた。命日にしめやかな曲でなく、めでたげなクリスマス・ソングを流されるほうが、愉快な道化だったフレディ・マーキュリーにかえってふさわしいと思い、微笑んでし…

綿矢りさ「You can keep it.」

(上記短編の展開に触れます) インストール (河出文庫)作者: 綿矢りさ出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2005/10/05メディア: 文庫購入: 4人 クリック: 166回この商品を含むブログ (285件) を見る 文庫化された『インストール』に追加収録された書下ろ…

西尾維新『ニンギョウがニンギョウ』

結末に触れているので、読む前にご承知を…… 「ファウスト」ではなく「メフィスト」に掲載された短編を集めた本だが、いっそのこと「群像」に載せればよかったのに、と思うような文学っぽさがある。「ファンタジー小説」って名称でライトノベルを並べる本屋が…

太陽の塔と「太陽の季節」/カラスと飛行機

障子にペニス、沖ノ鳥島に石原慎太郎 部屋に小さいものをゴチャゴチャ増やすと怒られてしまうので、食玩は買わないようにしている。でも、我慢できずに買ってしまった、「タイムスリップグリコ 大阪万博編」。太陽の塔や三波春夫、月の石など、1970年の万博…

藤里一郎×伊坂幸太郎『死神の精度』写真展

映画の帰り、近くの青山ブックセンター本店に寄ってみると、伊坂幸太郎『死神の精度』の表紙および作中の写真を担当した藤里一郎の写真展をやっていた(7日19:00まで開催)。 青と黒を基調にした表紙の写真は、文字デザインの効果もあって、昔のジャズのLP…

松岡圭祐『ミッキーマウスの憂鬱』(と『ディズニーランド裏舞台』)

ちょっと前から気になっていたこの本を読む。 東京ディズニーランドでバイトし始めたちゃらんぽらんな若者が、夢の舞台を作る現場の喜びに目覚めるストーリー。前半は、文献か取材かで集めたのであろう舞台裏情報の数々を、小説の形に整理・紹介しようとする…

『〔冲方式〕ストーリー創作塾』

マンガの世界と同じく、作家にアシスタント制度を導入しよう――てなことは、昔からギャグとしては語られてきた。それを実際に推進している冲方丁による小説入門書。 他人の作品を引用し一般論で語るのではなく、冲方本人が自作をどのように書いたか紹介する形…